日本は「インフラ後進国」
確かにこの十数年、日本ではことさらに「公共事業批判」が行なわれてきた。無駄な箱モノを作るな、ダムは不要……。だが、必要な河川の改修や堤防の整備、土砂災害対策までも後回しにするのは問題だ。それでもこのような声はあるだろう。「もう日本のインフラ整備は十分なのではないか?」。だが、「それは全くの間違い」だという。
大石 日本の場合、主要河川の改修率は60~70%に留まっています。整備計画はできているのに、予算がなくて実施できていない。情けない話です。諸外国と比較しても、日本は後れを取っています。
藤井 要するに、日本はもはや先進国ではなく、むしろ後進国と言わざるを得ない状況にあるのです。技術はあっても、緊縮財政の制約が激しく、実施できていない。そもそも梅雨時や台風のシーズンというのは、毎年やってくる「雨季」です。そしてその雨季になればもうそれだけで毎年、何十名、何百人もの方が命を落とすような国は、途上国と言わざるを得ません。
大石 1千人から1万人単位の人々に避難指示が出て、実際に何人もの方が亡くなっているのに、それでも対策のための予算を割かない。およそ理性的な判断とは思えません。
「財政守って国滅ぶ」でいいのか
ここまでを読んでも、「それでも借金が膨らめば日本の財政は破綻する」「そうなれば災害対策も何もない」という声はあろう。しかし、藤井・大石両氏は「財政破綻リスクは皆無」「災害リスクとはくらべものにならないほど極小」と指摘する。
大石 そもそも2002年に財務省自身が、「自国通貨建ての国債を出している国がデフォルトする可能性はない。過去にそのような国がデフォルトした例もない」と明確に発表しています。財政破綻する可能性は極めて低く、財務省もそのことは分かっているはずです。
公共事業費を増やし、資本形成を増やせば、GDPも上がる。経済が成長しますから、税収も必ず上がる。にもかかわらず、いま財政規律派がやろうとしているのは全く反対で、支出を抑えて増税しようという政策です。これでは、いつまでたってもデフレは脱却できない。
藤井 緊縮財政派が何よりも愚かなのは、税収が増えないのは緊縮財政をしているからだ、という真実に気がついていない点だと思います。積極財政を行えば経済は拡大して税収が増え、財政が改善する。一方、緊縮すれば逆に税収が減り、財政が悪化する。
データを見れば緊縮財政こそが財政を悪化させているのは明白なのですが、多くの経済学者や官僚、政治家たちがこのダイナミックな構図を理解していないのです。
――まさに「財政守って国滅ぶ」。緊縮財政派の「罪」や、南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模災害への提言、そして将来への思いが詰まった対談を、ぜひお読みください。