「クアッドの精神」で対中抑止を|湯浅博

「クアッドの精神」で対中抑止を|湯浅博

クアッドの構成国だけで世界の防衛費の半分を占め、人口と国内総生産(GDP)も3分の1に上る。四つの民主主義国を結ぶ「ダイヤモンド型の結束」が対中パワーバランスを可能にする。


日本は尖閣海域での領海侵入と、海警法の国際法違反を国際社会に訴えていく必要がある。インドは北部国境で中国による小刻みな領土侵略の緊張がやまず、インド洋でも中国の軍事測量船が出没している。オーストラリアはパプアニューギニアの沖合に出没する中国漁船団に海洋資源を荒らされる脅威に直面している。

4カ国それぞれに対中抑止力が欠かせず、クアッドが安全保障の枠組みとして定着化する要件を持ち合わせている。クアッドの構成国だけで世界の防衛費の半分を占め、人口と国内総生産(GDP)も3分の1に上る。四つの民主主義国を結ぶ「ダイヤモンド型の結束」が対中パワーバランスを可能にする。(2021.03.15国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

湯浅博

https://hanada-plus.jp/articles/401

産経新聞客員論説委員、国家基本問題研究所主任研究員。1948年、東京都生まれ。中央大学法学部卒、プリントン大学公共政策大学院Mid‐Career Fellow program修了。産経新聞入社後に政治部、経済部を経てワシントン特派員、外信部次長、ワシントン支局長、シンガポール支局長、特別記者・論説委員を歴任。2018年6月から現職。著書に『全体主義と闘った男 河合栄治郎』、『中国が支配する世界 パクス・シニカへの未来年表』など多数。

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