中国に尻尾を振り、呑み込まれる韓国|山本光一

中国に尻尾を振り、呑み込まれる韓国|山本光一

クライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略』(小社刊)で中国のオーストラリア侵略計画が明らかになったが、中国の侵略はオーストラリアに留まらず世界各地で繰り広げられ、中でも韓国は、もはや中国にずっぽり呑み込まれてしまっている……。韓国語翻訳者として韓国に精通した著者が、中国の「目に見えぬ」ならぬ、露骨な「目に見える」侵略を徹底解説!(初出:月刊『Hanada』2020年10月号)


中国による韓国への浸透を推し進めた一大勢力がある。中国朝鮮族(以下、朝鮮族)だ。その韓国への流入過程をさっと見てみよう。

1978年、中国で改革開放政策が実施されると、朝鮮族の韓国への移住が本格化した。82年、中国政府は朝鮮族の韓国親戚訪問を公式に認め、88年のソウルオリンピック以降は故郷訪問、出稼ぎ労働、留学などの目的で大挙、韓国へ移動し、韓国に滞在する朝鮮族が急増した。

80年代中盤から後半、親戚訪問を理由に簡単な手続きで韓国に入れるようになった朝鮮族は、漢方薬を持ってきて韓国で売って大金を稼ぐなどし、中国現地では「コリアンドリーム」という言葉も生まれた。

90年代はじめ、朝鮮族の男性の大半は建設現場の日雇い労働者、女性は食堂の従業員、家事手伝いのようなサービス業に従事していた。

朝鮮族が韓国に移動した大きな理由は、まず韓国労働市場での低賃金労働力の需要が高まったこと。一方、朝鮮族にとっては中国に比べて遥かに高い韓国の賃金水準、同じ言語を使い、環境に溶け込みやすいことが挙げられる。

不法滞在者が増え、韓国の出入国管理が厳しくなると、朝鮮族女性が韓国人男性と結婚して入ってくるケースも増えた。

韓国の3K職場を支える

1999年に施行された在外同胞の出入国と法的地位に関する法律(在外同胞法)は、在外同胞に国民に準ずる法的地位を与え、勤労ができる根拠を作った。

2004年、在外同胞の概念を規定した第2条第2項に「大韓民国樹立前に国外に移住した同胞を含む」という文言を追加した改正案が国会で成立。これにより、多くの朝鮮族が韓国に帰化できるようになった。

2007年、訪問就業制が施行された。中国やロシアなどで生まれ、韓国に縁故のない同胞にも、5年間、韓国で就業できる資格を与えるもので、朝鮮族が韓国に流れ込む起爆剤となった。

2010年には家事手伝い、育児ヘルパー、介護人、福祉施設補助員四職種に長期滞在を認めた。これにより、朝鮮族女性にも韓国での就業と長期滞在の機会が大きく開けた。2015年、在外同胞の就業範囲は製造業・農畜漁業・林業にも広がった。

韓国法務部出入国外国人政策本部の発表によると、2019年末現在、韓国に滞在する外国人は計252万4650人で、前年比6.6%増。韓国の全体人口に外国人が占める割合は4.9%に達した。

一般的に、5%を超えると多文化社会に分類される。韓国は2020年中に多文化社会となる見通しだ。ちなみに、日本の全人口に占める外国人の割合は2.16%(2019年末)なので、韓国のほうがだいぶ早く本格的な多文化社会を迎える。

国籍別では、中国が110万1782人で割合(43.6%)が最も大きかった。 このうち70万1098人が朝鮮族だ。帰化した朝鮮族も14万人くらいとされるので、合わせるとじつに85万人の朝鮮族が現在、韓国で暮らしており、主として3K職種の現場で韓国社会を支えている。

だが、多くの韓国人が、朝鮮族のアイデンティティを疑っている。韓国よりも中国に対する忠誠心のほうが強いのではないか、と。朝鮮族が中国による韓国への浸透の前線にいて、韓国をどんどん侵食しているという否定的な見方も払拭できない。

実際、今年2月、「朝鮮族が先頭に立って中国人たちが韓国の世論を操作し、政治や経済に少なからぬ影響を与えている」という匿名の朝鮮族による告白がネットを騒がせたりもした。

サード配備をめぐる報復

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