「菅義偉総理」待望論|小川榮太郎

「菅義偉総理」待望論|小川榮太郎

心にぽっかり空いた穴――。安倍総理辞任の報道を受けて、多くの人たちが同じような気持ちになったのではないだろうか。しかし、この国はいつまで“安倍依存症”を続けるつもりなのだろう――。「米中激突」で世界がより不安定になるなか、感傷に浸っている時間はない。6月の時点で「『菅義偉総理』待望論」を打ち上げたのはなぜなのか、その理由がついに明かされる!


石破茂と菅義偉

Getty logo

党員票で負けた相手を幹事長にするほど寛大な安倍氏のことである。石破氏が内政を強力に主導したとしても、それを妨害したとは思えない。

官邸が嫌悪する小池百合子氏が東京都知事になっても、安倍氏は小池都政に政治介入した形跡はない。安倍氏は政敵を積極的に潰すタイプの政治家ではないのである。
 
それにもかかわらず、石破氏は、内政における事実上の総理の立場を築けなかった。
 
事実上、内政を仕切ったのは、別の政治家だった。
 
菅官房長官である。
 
菅氏が、単に安倍政権のスポークスマンの役割を務めてきただけでないのは、いまさら指摘するまでもない。
 
官僚人事権を可能な限り駆使して霞が関を統御してきた高い統治能力は、氏の最大の功績と言って良いであろう。
 
だが、実は統治能力のみならず、政策実現においても、菅氏が主導した重大案件はいくつもある。
 
第2次安倍政権発足直後の2013(平成25)年1月、アルジェリア人質事件に遭遇した時、前例がないと難色を示す防衛省の抵抗を跳ね返して邦人救出のために政府専用機の派遣を命じたのは菅氏であった。
 
第2次政権が始まる平成24年度まで100億円の規模だったふるさと納税は、菅氏の肝煎りで、総務省が広報に力を入れ、控除枠も倍となり、さらにワンストップ制度を作ることによって、平成29年度には約3600億円に達している。
 
観光立国の推進も菅氏の旗振りだ。政権発足時の訪日客数は836万人だったが、平成30年には3000万人を超え、消費額も1兆円から4兆5千億円と、4.5倍も増加した。ビザ緩和も、カジノ等を含むIRの旗振り役も菅氏である。外国人富裕層向けの高級ホテルの建設を支援する方針も、令和元年12月7日に明らかにした。
 
これらこそ、事実上、安倍時代に最も成果を上げた地方創生に他ならない。
 
観光立国路線は、現在コロナ禍のために逆風に見舞われているが、それは路線の否定を意味するものではない。人口激減局面に入ったわが国にとって、観光客誘致は内需喚起のために最も有効な政策の一つである。
 
また、菅氏には安全保障上でも大きな功績がある。沖縄基地負担軽減担当大臣として、20年来の懸案である普天間から辺野古への基地移転を、沖縄県による訴訟等を乗り越えて着実に推進し続けてきたことだ。

女房役を遥かに超えた「功績」

安倍政権のグランドデザインにおいても、菅氏が要石となってきたのは間違いない。

政権発足初期の2013年11月18日の『プレジデント』でのインタビューで、菅氏は次のように述べている。

関連する投稿


石破首相は国益を毀損していた【山上信吾×河井克行】

石破首相は国益を毀損していた【山上信吾×河井克行】

月刊Hanada 公式YouTubeチャンネルに投稿した『石破首相は国益を毀損していた【山上信吾×河井克行】』の内容をAIを使って要約・紹介。


「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

衆院選で与党が過半数を割り込んだことによって、常任委員長ポストは、衆院選前の「与党15、野党2」から「与党10、野党7」と大きく変化した――。このような厳しい状況のなか、自民党はいま何をすべきなのか。(写真提供/産経新聞社)


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるなか、本日9日に衆院が解散された。自民党は総選挙で何を訴えるべきなのか。「アベノミクス」の完成こそが経済発展への正しい道である――。


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


最新の投稿


【今週のサンモニ】論理破綻な「旧統一教会解散命令」報道|藤原かずえ

【今週のサンモニ】論理破綻な「旧統一教会解散命令」報道|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


大相撲界に噂される「ブラックボックス」|なべやかん

大相撲界に噂される「ブラックボックス」|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


【今週のサンモニ】潔癖で党総裁になったのに潔癖でなかった石破首相|藤原かずえ

【今週のサンモニ】潔癖で党総裁になったのに潔癖でなかった石破首相|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】悪用厳禁の書! あなたの怒りは「本物」か  ジュリアーノ・ダ・エンポリ著、林昌弘訳『ポピュリズムの仕掛け人』(白水社)|梶原麻衣子

【読書亡羊】悪用厳禁の書! あなたの怒りは「本物」か ジュリアーノ・ダ・エンポリ著、林昌弘訳『ポピュリズムの仕掛け人』(白水社)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と日米安保条約に不満を漏らしたトランプ大統領。もし米国が「もう終わりだ」と日本に通告すれば、日米安保条約は通告から1年後に終了する……。日本よ、最悪の事態に備えよ!