「菅義偉総理」待望論|小川榮太郎

「菅義偉総理」待望論|小川榮太郎

心にぽっかり空いた穴――。安倍総理辞任の報道を受けて、多くの人たちが同じような気持ちになったのではないだろうか。しかし、この国はいつまで“安倍依存症”を続けるつもりなのだろう――。「米中激突」で世界がより不安定になるなか、感傷に浸っている時間はない。6月の時点で「『菅義偉総理』待望論」を打ち上げたのはなぜなのか、その理由がついに明かされる!


安倍政権でも果たせなかったこと

第2の「重大危機の解決能力」は、安倍政権においては大胆な金融緩和によるデフレ脱却の決断であった。完全な脱却には至らなかったものの、長らく1万円前後を停滞していた日本の株価は、2万円から2万5千円の間を安定して推移するに至り、雇用状況、最低賃金などは最も高い水準で推移している。
 
また、政権前半に矢継ぎ早に実現された特定秘密保護法、NSC創設、安保法制も日本の安全保障政策の重大な転換であり、この2点において第2次安倍政権は、平成年間の政権中、最大の危機解決能力を示したと言ってよい。
 
が、そのあとに残るいくつかの重大課題は解決されていない。ひとつは、増大し続ける中国の領土的野心を抑止し得る国防政策へのさらなる転換と憲法改正である。また、内政上最大の課題は人口激減であり、この点での安倍政権は掛け声倒れに終わった。
 
次の政権は、誰であれ、この2点の解決を図れない限り、日本の衰亡を齎す。
 
第3の「親日政権であること」はどうか。日本政界は戦後長らく米ソによる工作の草刈り場だった。平成年間は、ソ連に代わり中国の露骨な工作が日本の政財官学メディアを襲い、今日、中国に物言える政治家は極めて僅かという情けない有様になっている。
 
中国の工作は各政治家の後援会や経済界など、政治家の懐を間接的に狙うため、真に防御するには、自民党が対中態度を明確に定め、個々の政治家の資金源を防衛する断固たる措置に踏み切らねばならない。自民党にそれが可能かどうかが、日本の存続の重要な要となるだろう。
 
そのうえで、次期首相に求められるのは、国体=Constitution を守る強い意志である。日本の持続を象徴する126代男系継承されてきた天皇位、17条憲法に示された和の精神から、五箇条の御誓文、記紀万葉、源氏、能楽、神仏習合……。こうした日本の本質を守るとともに、国益を守り、外交関係を取引に還元せずに国家の尊厳を保持できるかどうか。

尊厳の保持は外交の本質である。実を取れば外交になるのではなく、体面をどう取るかを通じて実を生むのが外交だ。戦後日本の外交は吉田茂氏以後、あまりにもしばしばこの原則を逸脱してきた。

安倍外交が卓越しているのは、軍事・情報力の限定されたわが国で、アメリカに対しても、中国、韓国に対しても、決して国家の尊厳を売り渡さなかった点にある。

石破茂はなぜ政治家失格なのか

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これら3点を、次期総理はどこまで達成できるか。
 
石破氏について、まず見たい。
 
おそらく安倍氏自身や保守層が、いま最も次期総理にしたくない存在が、石破氏だろう。

だが、他の総理候補の国民支持率がどんぐりの背比べであるなかで、石破氏の支持率は安定して高水準にある。安倍氏周辺の政治家のなかには、有力な総理候補がまだ見当たらない。このような状況では、結局世論調査の数字を根拠に、自民党総裁選が雪崩をうって石破氏に流れることは充分あり得ると見なければならない。
 
では、石破氏は総理の任に堪え得るか。
 
私は、残念ながらそうは考えない。
 
氏は、『文藝春秋』の最新号2020年7月号に「安倍総理は国民を信じていないのか」を寄稿しているが、その冒頭を次のように語り始めている。

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