「菅義偉総理」待望論|小川榮太郎

「菅義偉総理」待望論|小川榮太郎

心にぽっかり空いた穴――。安倍総理辞任の報道を受けて、多くの人たちが同じような気持ちになったのではないだろうか。しかし、この国はいつまで“安倍依存症”を続けるつもりなのだろう――。「米中激突」で世界がより不安定になるなか、感傷に浸っている時間はない。6月の時点で「『菅義偉総理』待望論」を打ち上げたのはなぜなのか、その理由がついに明かされる!


いつまで「安倍依存症」を続けるつもりか

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では、安倍氏自身は4選に前向きだろうか。

とてもそうは言えまい。
 
森友・加計騒動、桜を見る会などの常軌を逸した倒閣運動に消耗し、政権が長期化するなかで、党も官邸もダイナミズムを失っている。

安倍首相としては、今夏に東京五輪を開催して失速傾向にあった現況に再生の勢いを与え、憲法9条改正へと王手を掛けるべく、政権最終局面への気力を奮い立たせようしていた矢先にコロナ禍に見舞われた。
 
世界でも最も適切・充分な対応をしたのに、野党のみならずマスコミ・有識者らの言いがかりレベルの罵倒が続く。そのうえ、役人界隈の不始末も全て政権のせいにされる。いくら何でもやりきれまい。
 
状況の緊迫性と国民の要請を受け、安倍氏が4選または任期延長を受け入れる可能性はゼロではないかもしれない。
 
が、そうであっても、逆に問わねばならない。
 
この国は、一体いつまで安倍依存症を続けていれば気が済むのか、と。
 
政治家たちの明確な覚悟と政権構想の練り上げはもとより、論壇・国民も、次期総理について、現実的な宰相論を始める必要があるのではないか。
 
いま、世界は、国家指導者の人間力、政権担当能力が、ただちに国力となって跳ね返る、新たな時代に突入している。オバマのアメリカとトランプのアメリカ、胡錦濤の中国と習近平の中国、鳩山・菅・野田の日本と安倍の日本では、まるで別の国のようだ。
 
もし次期首相の統治能力が低く、経済が不安定化すれば、中、韓、露、米は、ただちに揺さぶりをかけ始め、安定した安倍時代は瞬時に終わるだろう。そうなれば、支持率は20%まで一気に低下する。時代は、政局一色になる。そしてその反作用として、強い総理が待望されるに違いない。
 
誰が出現するか。
 
小泉純一郎型のポピュリストである。
 
具体的に言えば、小池百合子氏や、橋下徹氏らの出番である。
 
小泉氏は、特段の国家観を持ち合わせない典型的なポピュリストだったが、福田赳夫氏の書生から出発した自民党派閥政治の叩き上げだった。彼は破壊者を演じ、実際に自民党の重要な機能をいくつも破壊してしまった。

とはいえ、根本的には自民党の伝統的な統治原則の範疇の人物であり、とりわけ日米関係の保持においてそれは顕著だった。
 

次期宰相の「3大条件」

が、小池氏や橋下氏となれば、話は全く変わってくる。

政治的出自=根がない、本当の「ポッと出指導者」である。両氏の地方首長としての手法をみれば、ポピュリズムの暴走、事実上の議会無視型の独裁に突き進む可能性が高いのは間違いあるまい。
 
また、50代を中心とする次世代型ポピュリストは、橋下徹氏や堀江貴文氏に代表されるように、世の中の事柄をすべて経済合理性に還元し、対他関係を全て取引に還元する傾向が強い。

そのように、事柄を全て合理性と取引に還元するような価値観の持ち主は、外交関係をも取引に置き換えるであろう。こうした指導者に対して、中国が取引の形を取った事実上の間接支配のシナリオを描くのは想像に難くない。

次の自民党政権が低支持率に喘ぎ、再び総理交代を繰り返して国情が混乱すれば、わが国はポピュリズム→独裁型統治→中国による間接支配に一気に進む可能性が極めて高いのではないか。
 
だからこそ、ポスト安倍論は、競馬の下馬評のような政局当て物談義であってはならないのであって、誰が籤を引くかではなく、どんな資質が求められるかを真摯に問い、次期宰相を演繹する作業がどうしても必要となるのである。
 
では、いま日本の総理に求められる資質とは何なのか。
 
次の3点に要約できる、と私は考える。
 
第1に、安定統治能力である。
第2に、重大性・緊急性の高い国家的危機を解決する見識と政策実行力である。
第3に、親日政権であることである。国体護持、国益最優先派であること。国家の威信を決して汚さぬ人間であること。──この3点こそが次期宰相の3大条件であろう。

 
統治の安定は平成年間を通じ、橋本・小渕政権と小泉政権、第2次安倍政権においてしか実現していない。橋本・小渕時代は、田中派の遺産の総決算期であったが、橋本氏の消費増税の失政と小渕氏の短命によって約4年で幕を閉じた。
 
小泉政権は政策に関しては評価し難いが、経済の失政を本人のカリスマ的なPR力で補うとともに、アメリカに完全に軸足を置くことで、安定統治を実現した。
 
第2次安倍政権については言うまでもない。憲法改正を阻止しようとするリベラルメディアからの執拗な安倍叩きに晒されながら、いくら底を打っても、支持率40%~50%台に回復する驚異の粘りを見せている。

次期首相は、誰であれ、政見や政策以前に安定統治を実現すべく周到なプランを練らねばならない。統治の安定が失われた途端、日本は経済・雇用・外交・安全保障全てが暴風雨に巻き込まれるからだ。

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