冗談はさておき、とにかくいまの中国では、習近平という一個人が国の政治・経済・軍事・外交を動かす権限をすべて握る。習近平は唯我独尊の独裁者となっている。
問題は、14億人の大国を動かす権力を手に入れた習近平は一体どのような政治を行っているのかということであるが、それは一面においては、実は鼻で笑えるほど愚かなものである。
6月30日に習近平の主導下で強行された「香港国家安全維持法」の成立はその一例である。この「天下の悪法」の成立と施行によって、習近平政権が香港から反対勢力を一掃することはたしかにできるが、その代償はあまりにも大きい。香港を殺すことで、中国は外国資本導入・外国企業誘致の主要な窓口、対外輸出の窓口の一つを失う。そして、「一国二制度」の約束を公然と破ったことで国際的信用をさらに失い、自らの国際的孤立を招いている。
「アホ」と言うしかない
自国に多大な損をさせる習近平のやり方は、関西弁でいえばまさに「アホ」と言うしかないが、実は「香港国家安全維持法」制定も、アホな習近平の取った愚挙が一つのきっかけとなっていた。
2015年10月、香港銅鑼湾書店店主の林栄基氏以下5名が相次いで失踪。書店が習近平のスキャンダル暴露本の出版を予定していたため店主らが中国に拉致されたのではないか、との疑いが広がった。翌年六月、香港に戻った林栄基氏は記者会見を開き、中国の公安によって拉致された事実を暴露した。結局、習近平は、自分のスキャンダル暴露本を潰すために拉致するという、乱暴にして愚かな行動に出た。
しかし、この拉致行為は香港市民と国際社会の強い批判に晒され、さすがの習政権も拉致という非常手段はいつでも使えるものではないと悟った。政権はその後、香港から人を「合法的に」拉致できるような代替手段を模索、その結果、2019年2月に香港政府が習政権の意向を受けて「逃亡犯条例改正案」を提出した。「改正案」が成立すれば、「容疑者」の中国本土への移送が可能となる。