オーストラリアの首相から外相までの名前が
一方、小国としての脆弱性を感じながら経済至上主義に走っていたオーストラリアは、「これからは中国と共に生きなくてはならない」と思い込み、「中国の夢」を両手を広げて迎え入れてしまったのである。
そんなオーストラリアを中国は西洋最弱と見なし、浸透工作による属国化計画の実験場として選んだ。
それにしても、オーストラリアの首相経験者を始めとする著名な政治家のなんと多くが中国に取り込まれ、中国の代弁者になってしまったことにため息をつかざるを得ない。ボブ・ホーク、ポール・キーティング、ジョン・ハワードなどの元首相を始め、元外相のボブ・カーに至っては、「北京(ベイジン)ボブ」と仇名されたほどである。
私が個人的にショックを受けたのは、クレッグ・ローンディという連邦議員の名前を本書で見つけたことである。
私がかつて仲間たちとシドニー郊外のストラスフィールド市で、慰安婦像公有地設置に反対する活動をしていたとき、こちらの立場を説明して理解を求めた地区選出議員のひとりがローンディ議員だった。その彼がまさかここまで中国と抜き差しならぬ関係とは知らず、改めてぞっとした。
中国による浸透工作が半ば完了しつつあったとき、強烈なウェイクアップコールとなったのが、ハミルトン教授による本書「サイレント・インベージョン」である。
本書はオーストラリアを変え、アメリカにも大きな影響を与えた。新型コロナウィルスによる惨禍で、中国という一党独裁国家の脅威に世界中が目覚めつつある今、ひとりでも多くの日本国民が直面する危機の本質に気付いてくれることを訳者の奥山真司先生と共に強く願っている。