給付するならば“条件”を設けるべき
事程左様に小規模事業者は不健全な経営を続けてきました。
先代までは小西美術工藝社も小規模事業者のように、ガンガン経費で落としていたようですが、私が社長になってからはそういうことはやめ、改革して、きちんと税金を払い、内部留保に回すようにしました。
おかげで、いまは半年以上、収入が途絶えても持ちこたえることができます。ここで無条件に弱い企業を助けたら、小西美術の経営方針は間違ったものとなります。
今回、小規模事業者というだけでサポートすれば、不健全な経営をするインセンティブをまた彼らに与えてしまいます。不健全でギリギリの経営であればあるほど、危機のとき、大きな声で悲鳴を上げることができ、政府の耳にも届きやすくなる。
給付を受けた小規模事業者はこう思うはずです。
「いざとなれば、国が助けてくれる。とにかくガンガン経費を使って、ギリギリでやっていく方が得だ」
実際、私の周りの零細企業の社長にも、「真面目に税金を納めるなんてバカだ」と考えている人は、かなりいます。事実、約8分の7の小規模事業者は慢性的な赤字です。
私は何も全ての小規模事業者に手を貸すなと言っているわけではありません。ただ、日本の悪平等的な考えで、弱い小規模事業者から優先して守るようなことをしてはいけないと言っているのです。
少なくとも、小規模事業者に給付するならば、売上げが下がっているかどうかだけでなく、生産性、ここ五年間で賃上げをしているかとかどうかなども、条件に組み込むべきです。賃上げは国の方針、それに従わないで、カネだけほしいというのは虫がよすぎるでしょう。何より、慢性的な赤字企業は税金を払っていない以上、もらう権利はありません。
起業から七年以上で、何期中何回税金を払ったかを基準にするべきです。これくらいのことをしないと、小規模事業者は平時に戻った時に、赤字経営を考え直してくれません。
生産年齢人口全員に給付を
先の経済学者は「雇用を守るのが優先」と主張していますが、労働者を守るのに、小規模事業者の経営者を守る必要はありません。それは、たとえば休業手当を国が肩代りするやり方で可能です。
労働基準法第二十六条では、使用者(雇用主)の責任による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の六割以上)を支払わなければならないとされています。ただ、不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払い義務はありません。
いま、企業が休業を余儀なくされているのは国の要請です。ならば、休業手当を国が肩代りするのが筋だと誰もが思うところでしょう。
国が肩代わりするやり方であれば労働者を守ることができる上、小規模事業者の経営者に負担を軽くすることができても、経営者の優遇にはつながりません。バラマキに比べて休業しているところにだけ給付するので、国の負担も少なくて済む。
労働者は外出自粛で家から出られませんから、普段と違って交通費、交際費などのコストはかかりません。賃金の6、7割の休業手当でもなんとかやっていけます。
ベストなのは生産年齢人口(生活保護受給者、年金受給者、公務員を除く)にまんべんなく最低賃金分の給付をするやり方です。
「高所得者にもカネを配るのか!」と目くじらを立てる人がいますが、確定申告で調整すれば問題ありません。もっとも公平性でやりやすい。
しかし、いま政府が行っている対策は問題点が多い。
すでに休業手当に要した費用を助成する雇用調整助成金はありますが、休業届実施計画、休業協定書の提出など、いかにも“日本らしい”申請手続きをしなければなりません。有事であっても、こういった手続きを省略させないのです。
野党などは消費税減税を声高に叫んでいますが、私には、減税に意味がないように思えます。いまは外出自粛で、コンビニやスーパーくらいでしか買い物が出来ませんから、減税したところで、消費者の恩恵はわずか。
そもそも、買い物するための「元手」がないことが問題なのですから、減税ではたいした解決にならないでしょう。