日本のシステムは「平時」が永遠に続くこと前提
私から見ると、日本は「石器時代」のやり方をいまだに続けているように見えます。少なくともITがある世界のやり方ではない。きちんと、マイナンバーが普及させて、国民一人ひとりの情報がデータベース化され、ITを活用できていれば、もっとスピーディーに給付ができたはずです。
ドイツはオンラインで給付申請できたといいますし、インドも、国民ID「アダール」(日本のマイナンバーに相当)などのデジタル公共インフラを活用した直接現金給付を実施すると発表しています。
さらに、データベース化をすることによって分析ができて、どこにいくらの支援が必要なのかを、科学的な根拠を持って提案可能です。
もし日本が国民の情報をデータベース化していれば、生産年齢人口のなかに既婚者は○人、子供は○人、全員に給付するには○兆円必要などと数字がすぐに出てくるはずですが、政府の提示した経済対策百八兆円や、一世帯あたり10万円という数字には、あまりそういった根拠が見られません。
正確な数字が出てくれば「国は破綻する」という根拠のない話も不要となります。データがないから、誰にどう配ればいいかわからない、というのが政府の本音ではないでしょうか。
日本は平時が永遠に続くこと前提でシステムがつくられ、危機への備えがなされぬまま、ここまで来てしまいました。中小企業の優遇措置然り、マイナンバーの徹底不足然り、政府は国民に優しすぎます。
確定申告も、最近になって「オンラインでもできます」と啓蒙していますが、反発を招いてでも「今後オンラインでしか受け付けません」と強引にオンライン化を進めていれば、コロナが流行しているなか、税務署に人が溢れるなんてこともなかった。
日本人は洗脳されやすい?
リモートワークも、企業はコロナ騒動が起きてから慌てて対応しています。これを機会に企業のリモートワーク化が進み、日本人の働き方がもっと効率よくなるのではないか、と期待している人がいますが、残念ながら難しいでしょう。
これも中小企業問題とつながっています。もちろん大企業、中堅企業では進むかも知れませんが、日本の企業360万社のうち、305万社は小規模事業者。小規模事業者はそもそも体力がなく、先述したようにリモートワークするための設備を整えることができませんから、日本全体で考えた場合、なかなか浸透していないでしょう。実際、大企業の導入率が57%なのに対して、中小企業は14%です。
中小企業の問題を分析するなかで、痛感したのが「日本人の素直さ」です。中小企業優遇措置を打ち出せば、中小企業が増える。これが経済学の原理です。
しかし、「政府の言うことなんて信用できない」「そんな政策うまくいくわけがない」と疑う人が多数いれば、原理どおりにいかないこともある。日本の場合は、1963年に中小企業基準法を制定した途端、またたく間に中小企業が激増していった。
洗脳されやすいというか、素直というか、とにかく政府の政策どおりに動くのです。今回の外出自粛でも、ロックダウンしたわけでも、厳しい罰則があるわけでもないのに、日本人は素直に従っています。
だからこそ政府の発信、政策は重要になってくる。少なくとも政府はこれ以上、生産性の低い、特に慢性的な赤字小規模事業者への優遇措置はもちろん、彼らを喜ばせるような発言は絶対してはいけません。