これのどこが国家機密なのか
中国当局が主張する「国家機密」の詳細は明らかではないが、「岩谷氏はこれまでも、自らの研究テーマである日中戦争など当時の資料を収集するため、中国に渡航したことがあった」と証言する関係者もいる。主に古本業者から購入していたという。
80~100年前の歴史資料が「国家機密」でないことは、国際社会の常識である。中国でも、その年代の資料は基本的に公開されている。しかし中国の治安当局は、拘束の口実として、岩谷氏が手に入れた歴史文献が「国家機密」と主張した可能性もある。
中国当局の逆鱗に触れた?
南京事件の経緯や慰安婦問題など日中戦争当時の出来事について、中国政府と日本の研究者の間で大きな見解の違いがあり、岩谷氏はこれまでに、中国当局の主張を実質的に否定する論考を展開したこともある。一部の関係者の間で、「岩谷氏の研究が中国当局の逆鱗に触れたのではないか」との見方が示されている。
もし岩谷氏の拘束理由が研究内容と関係しているのであれば、日本の中国研究者の学問の自由が侵される由々しき事態といえる。