当て推量で憶測した典型的なデマ報道
〈中国人がどんどん入って来る〉
玉川徹氏:新規の発生数は、武漢以外の所の新規の患者のほうが上回っていく可能性がある。いま、武漢からは一般民間機が日本に飛んで来ないが、武漢以外の所からは当たり前に日本に飛んできている。そういう形で、どんどんどんどん入って来る(1月30日)。
【注釈】これは、状況を分析することもなく、当て推量で憶測した典型的なデマ報道に他なりません。まず、現在でも武漢(湖北省)の感染率(約1500人に1人)と武漢以外の中国本土の感染率(約20万人に1人)は100倍以上異なります。
すなわち、武漢を除く地域では、大流行しているとは必ずしも言えない状況にあり、しかも1月27日の段階で中国の国外団体旅行が禁止になったため、旅客数も急速に減少しました。
政府の調べによると、2月中旬の中国からの訪日旅客数は1日800人程度に落ち込み、確率計算をすれば、仮に中国の感染者数が発表数の10倍であったとしても、感染者が来日する期待値は「1カ月に1人」程度ということになります。つまり、感染者が現在よりも少なかった1月30日の段階で「どんどん入って来る」という可能性は極めて小さかったと言えます。
なお、日本政府が世界に先駆け、武漢のある湖北省のみに入国制限をかけた(のちに2番目に感染率が高い浙江省を追加)ことは、非常に合理的なリスクマネジメントであったと言えます。感染症防止の観点からすれば、中国全土を入国制限する効果はほとんどありませんでした。
日本に新型コロナウイルスを持ち込んだのは、1月22日以前に武漢から来日した旅行者と考えるのが合理的です。武漢市長によれば、その数は約9000人であり、これを日本政府が阻止することは事実上不可能であったことは自明です。見かけの感染率から考えれば、この時に最低でも5~6人の患者が来日して日本国民にウイルスを感染させたものと考えられます。その一つが屋形船です。
〈緊急事態条項〉
玉川徹氏:ドサクサ紛れに、自分たち(改憲論者)の野望(緊急事態条項)をこの機に実現させようという動きは不誠実だ。いま何が問題かと言えば、対応が後手に回っていたり不十分だったりする政府の能力であって、仮に緊急事態条項が憲法にあったとして、能力の低い政権がそんな諸刃の剣を持っていたら何をやらかすか、そっちのほうがよっぽど心配だ。あとから振り返った時に、「何をしてくれたんだ」ということをやってしまう可能性がある諸刃の剣だと、もう一回言っておきたい(1月31日)。
【注釈】このような危機が存在するからこそ、日頃から緊急事態条項の必要性を議論することが重要であると言えます。自分の価値観を国民に押し付けて支配するような玉川氏の断言口調は、極めて傲慢です。大きな勘違いをしているものと考えます。
先を読めない極めてナイーヴな玉川徹
〈感染者隔離用チャーター船〉
岡田晴恵氏:過去には病気が流行すると、お金持ちがクルーザーで沖に行って自分の身を守るということがよくある。武漢から航空機での帰国者に船(チャーター船)を使うのはいいと思う。船は効果的だ(1月31日)。
【注釈】この日に至るまで、尾身茂氏、勝田吉彰氏、木村盛世氏などの専門家をコメンテーターに起用していた番組ですが、この日を境に岡田晴恵氏を起用し続けることになります。
岡田氏は、航空機での帰国者の隔離場所が不足している問題の解決法として、チャーター船を隔離に使うべきと主張しました。この提案が無責任な耳学問に過ぎないことは、わずか1週間後にクルーズ船で感染者が大量発生して、見事に証明されることになります。
〈後手後手の対応〉
玉川徹氏:米国がやり過ぎなのかといえば、やり過ぎではない。米国は先を読んで先を読んで手を打っている。日本の場合のいままでの対応を見ていても、後手後手になっている。なぜ、入国制限を中国全土にしないで湖北省に限定しているのか、合理的な説明が見出せない(2月3日)。
【注釈】統計学的な見地に立てば、感染率の空間分布に極めて大きな差がある中国全土を入国制限した米国は不合理であり、他地域よりも100倍以上感染率が高い湖北省のみを入国制限した日本に合理性があります。
リスクマネジメントの知識も持たずに思考停止に安易なゼロリスクを称賛する玉川氏は、先を読めない極めてナイーヴな人物です。