問題は、DJI機が空撮したデータの取り扱いである。あまり知られていないが、データはユーザーのパソコンなどに移されると同時に、中国にあるDJIのデータセンターにも蓄積されることになる。DJI機を購入したユーザーは、こうしたDJI機の仕様に同意しなければ使用許諾を得ることができない仕組みになっているのだ。
ドローンの空撮データには、GPS(全地球測位システム)の信号とともに緯度・経度・高度の画像情報が記録される。いまや日本全国で橋梁の保守や工場の安全点検、災害復興、農薬散布など種々雑多な空撮が行われており、これら一つひとつは「点」でしかないが、すべてのデータが手に入るとすれば、やがて「面」となり、それは日本の低空域における「航路情報」になり得る。低空域における航路情報をインプットすれば、ドローンは無線操縦に頼らない「自律航行」が可能となる。
世界的にドローン規制が未整備な現在は、法の網の目をくぐり抜けた「偵察行為」が可能な状態にあると言える。現状を放置すれば、日本の国土は確実に“丸裸”にされる。その危険性を認識したうえで、中国製のドローンを使用しているだろうか。
東京都心の空間地理情報が中国企業に転売
実際に、中国が空間地理情報を狙っていると思わざるを得ない事件も発生している。2019年8月に埼玉県内に住む貿易会社役員の男が、首相官邸や皇居がある東京都心の空間地理情報をNTTグループ会社NTT空間情報株式会社からだまし取ったとして、警視庁公安部に書類送検されている。
販売されたデータは「GEOSPACE 3D ソリューション」と呼ばれる商品で、電子地図と航空写真のデータを組み合わせたもので、建物の高さと標高を1・5メートルの精度で表したものだ。地形の高低差情報は、ミサイルの飛行ルートを定めるうえで重要なデータになり得る。男は、2016年に転売目的を隠したうえでNTT空間情報から200万円で購入し、中国企業へ転売している。男は30年前に、中国から日本に帰化している。