安倍総理「台湾加油」で深まる日台の絆|金美齢

安倍総理「台湾加油」で深まる日台の絆|金美齢

「台湾加油」 安倍総理が地震に見舞われた台湾に向けて色紙に揮毫した文字です。 2月6日深夜(日本時間7日未明)、台湾東部で地震が発生し、花蓮市では12階建て集合住宅兼ホテルが倒壊、死者9名、日本人を含め負傷者200名を超える被害が出ました。


ところがこれに水を差す動きもありました。2月8日に首相官邸ホームページに掲載した文書にあった〈蔡英文総統閣下〉の文字を、その日のうちに削除したというのです。これについて2月13日、元民進党で現在希望の党である源馬謙太郎議員が質問主意書を出し、「なぜ台湾総統宛だったのに、宛名を削除したのか」と政府に尋ねたのです。

同日、菅官房長官は記者会見で「蔡英文総統閣下」の宛先を削除したことを認め、その理由を「より広く台湾の皆さんへのメッセージとして掲載することが適当だと判断して変更した」と説明しました。

これが中国の圧力なのか、外務省・チャイナスクールの「忖度」なのか、あるいは自民党内の親中派によるものなのか、自粛なのか、そのすべてなのかは分かりません。しかし何と肝の小さいことか。地震という、日台双方が見舞われる不幸な体験を共有し、互いに助け合おうという時に邪魔をする。中国はほくそ笑んでいることでしょう。

しかしこのような自主規制で中国の意に沿うようなことばかりするのは役人や政治家だけではありません。

本誌2018年3月号で水野靖夫さんが「『広辞苑』は偏向、有害図書」という記事の中で指摘しているように、岩波書店が出版した『広辞苑』では、台湾を「台湾省」と記載しています。

これに対し、台北駐日経済文化代表処をはじめとする多くの団体が、新しく出る第7版では記述を改めるよう求めたのに対し、岩波書店は〈『広辞苑』のこれらの記述を誤りであるとは考えておりません〉として修正を受け入れませんでした。

言葉を定義する辞書を作る人間が、「台湾は『中華人民共和国台湾省』である」と事実と異なることを書いて憚らない。台湾人の存在を認めないかのような記述をして、それによって人権が侵害されている本人たちから抗議があっても一顧だにしない。これは言葉や言論を扱うプロとして恥ずべき態度ではないでしょうか。

「謝謝羅馬人!」

一方、2月8日、台湾で行われたエアコンの発表会に参加した俳優の阿部寛さんは立派でした。地震が発生した6日から台湾に滞在していた阿部寛さんは「つらく悲しい思いです」とのお見舞いと、現場で不明者の救出にあたるレスキュー隊員らに対して「大変だとは思いますが頑張って欲しい。1日も早く平穏な生活が戻ることをお祈り申し上げます」と労いの言葉を述べたと言います。

報道によれば、この時、現地のイベントスタッフからは「地震の話はちょっと……」とたしなめられたそうです。「新商品お披露目に地震被害など縁起が悪い」と思ったのか、華々しい雰囲気に水を差されると思ったのかはわかりませんが、これまたずいぶん肝の小さい話。

対して阿部さんは「いまこの話をしないで、何を話せばいいんだ」と言ったと言いますから、小さいことを気にしない、そのスケールの大きな姿勢に心から拍手を送りたい。

それだけではありません。阿部さんは、イベント終了後には、1000万円を台湾に寄付すると述べたのです。額の大きさもさることながら、寄付を公表したことが報じられ、日本での支援拡大の呼び水にしようという思いもあったのでしょう。

阿部さんの振る舞いに、台湾人は大喜び。阿部さんが「ローマ人」役で主演した映画「テルマエロマエ」は台湾でも大人気でしたが、これになぞらえてネット上には多くの台湾人が「謝謝羅馬人(ありがとう、ローマ人)」と書き込んだと言います。先に触れたように、台湾メディアも大きく取り上げました。

(※後日、台湾代表処を訪れた阿部寛さん)

関連する投稿


日米に対して、中国「ゼロ回答」の背景|和田政宗

日米に対して、中国「ゼロ回答」の背景|和田政宗

日中首脳会談が約1年ぶりに開催された。岸田総理は日本の排他的経済水域(EEZ)内に設置されたブイの即時撤去等を求めたが、中国は「ゼロ回答」であった。聞く耳を持たない中国とどう向き合っていけばいいのか。(サムネイルは首相官邸HPより)


ウイグルの自由と独立のためともに闘う!|和田政宗

ウイグルの自由と独立のためともに闘う!|和田政宗

中国政府は「ウイグル人はテロリストでテロ組織に属している」という主張を展開し、「ウイグル人は中国国内において弾圧されていない」という世論工作活動を世界各地で展開している――。(サムネイルは日本ウイグル協会Xより)


【読書亡羊】中国軍人の危険な書、なぜ「台湾統一」の項は削除されたのか  劉明福『中国「軍事強国」への夢』(文春新書)

【読書亡羊】中国軍人の危険な書、なぜ「台湾統一」の項は削除されたのか 劉明福『中国「軍事強国」への夢』(文春新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


望月衣塑子記者の暴走と自壊するジャーナリズム|和田政宗

望月衣塑子記者の暴走と自壊するジャーナリズム|和田政宗

ジャニーズ事務所会見での「指名NGリスト」が騒ぎになっているが、そもそも記者会見とは何か、ジャーナリズムとは何か、それらをはき違えた人物たちにより我が国のジャーナリズムが破壊されることは、ジャーナリズム出身者としても許せない。(サムネイルはYouTubeより)


イーロン・マスクが激奨する38歳の米大統領選候補者とは何者か|石井陽子

イーロン・マスクが激奨する38歳の米大統領選候補者とは何者か|石井陽子

米史上最年少の共和党大統領候補者にいま全米の注目が注がれている。ビべック・ラマスワミ氏、38歳。彼はなぜこれほどまでに米国民を惹きつけるのか。政治のアウトサイダーが米大統領に就任するという「トランプの再来」はなるか。


最新の投稿


川勝知事のヤバすぎる「不適切発言」が止まらない!|小林一哉

川勝知事のヤバすぎる「不適切発言」が止まらない!|小林一哉

議会にかけることもなく、「三島を拠点に東アジア文化都市の発展的継承センターのようなものを置きたい」と発言。まだ決まってもいない頭の中のアイデアを「詰めの段階」として、堂々と外部に話す川勝知事の「不適切発言」はこれだけではない!


【今週のサンモニ】田中優子氏「立ち止まれ」発言の無責任|藤原かずえ

【今週のサンモニ】田中優子氏「立ち止まれ」発言の無責任|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。外交交渉の具体的アイデアを全く示すことができないコメンテーターたち。


「パンダ」はいらない!|和田政宗

「パンダ」はいらない!|和田政宗

中国は科学的根拠に基づかず宮城県産水産物の輸入禁止を続け、尖閣への領海侵入を繰り返し、ブイをEEZ内に設置するなど、覇権的行動を続けている。そんななか、公明党の山口那津男代表が、中国にパンダの貸与を求めた――。(写真提供/時事)


中国で逮捕された邦人の救出に全力を尽くせ|矢板明夫

中国で逮捕された邦人の救出に全力を尽くせ|矢板明夫

数カ月もすると、拘束される人は精神状態がおかしくなり、外に出て太陽の光を浴びるため、すべてのでっち上げられた罪を自白する人もいる。中国当局のやり方が深刻な人権侵害であることは言うまでもない。


首相から危機感が伝わってこない|田久保忠衛

首相から危機感が伝わってこない|田久保忠衛

ハマスやレバノンの武装勢力ヒズボラをイランが操り、その背後に中露両国がいる世界的な構図がはっきりしてこよう。