伊藤氏の著書『Black Box』(以下BB)によると、伊藤氏は担当の捜査官から詳細な捜査情報を数多く聞かされている。事実なら、言うまでもなく警察官として違法行為、それも警察の信用の根幹にかかわる情報漏洩だ。
刑事事件が成立しなかったのは当然であろう。それを、日刊スポーツの記事は性暴力が実際にあったとの前提で山口氏の実名まで出している。
刑事事件として山口氏の無罪は確定したのだから、性暴力の犯罪者だとの前提で山口氏の名前を出すのは名誉毀損、人権侵害そのものである。
さらに「民事訴訟で訴えた」とあるが、その訴状の中身がどれほど杜撰かは、第1弾で詳細に論じた。
ところが、その私の論考も、並行して出した「ファクトチェック」動画4編も、多大な反響を呼んだにもかかわらず、伊藤氏側も、『週刊新潮』をはじめ、山口氏を貶める大々的なキャンペーンを張ってきたメディアも、今日まで全く音無しの構えだ。
1つとして有意な反論、反証もなければ、私に対する取材も1件もない。
私にとっては、朝日新聞による5,000万円訴訟、『新潮45』廃刊事件などで毎度の経験だからいまさら驚きもしないが、攻撃するだけ攻撃はするが、反証に対しては黙殺し、主流メディアも週刊誌も取材さえせずに、私の反証そのものをなかったことにする異様な言論状況の、これもまた一環であるのは明らかだろう。
では、私への反論が一切ないまま公に顔を出した伊藤氏は、フラワーデモで何と発言したのか。
伊藤氏はマイクを手にすると、
「今日、一番話したいことは、同意についてです」と切り出したという。
私は椅子から転げ落ちそうになった。
伊藤氏は、最初の刑事訴訟で準強姦=つまり寝込んでいたところを山口氏に姦淫されたと主張して不起訴になったあと、現在進行中の民事訴訟では、山口氏から強姦、暴行、傷害致死未遂の数々の暴力を受けたと主張しているのである。
一連の過程において、性交渉における同意が争われたことは1度としてない。準強姦にせよ強姦にせよ、同意の有無以前の話だからである。
伊藤氏はいつから「暴行・強姦」の被害者から、同意の有無を争うことに話をすり替えたのか。
私が「虚偽」と断定した「山口氏の強姦、暴行、傷害致死未遂」はどこに消えたのか。
同意のない性行為はレイプ
「現在、英国に拠点を置くという伊藤氏は、性暴力を受けた被害者の女性が、裁判で黒い下着などを着けていたから同意のうえ性交渉をしたんだろうと糾弾されるのが、国内外における現状だと指摘した。そのうえで『どんな服、下着であっても絶対に、それが同意になるわけはないです。どんなに飲んでも、どんな場所に行っても、どんな時間に歩いていても、それは性的同意とは見られない』と訴えた」(日刊スポーツ)
馬鹿馬鹿しい。
派手な下着も過度の飲酒も、それだけで一意的な性的同意に当たるわけはないに決まっているではないか。私も、また法廷における山口氏側弁護人も、下着や飲酒を性的同意の証拠だ、などという主張は微塵もしたことはない。
なぜなら、彼女の側が同意を主題にしたことなど1度もないからだ。
伊藤氏は、このスピーチでスウェーデンの例を持ち出したようだ。スウェーデンに限らず、EUではすでに10カ国で明確な同意のない性行為をレイプとみなす何らかの法制定がなされている。
このこと自体、人類が長年作り上げてきた法理と常識からみれば、人類の辿り着いた病理と言うべき異常事態だが、背景には移民政策による有色人種系の犯罪、集団暴行、宗教間の性意識の違いによる強姦の多発など、EUにおける性被害の深刻な実態がある。
それでも私は疑問に思う。寧ろ、悪質な性暴力を真に予防するには、曖昧で反証可能性に欠ける同意条項の制定よりも、凶悪な性暴力に対する極刑の強化のほうが、遥かに意味があるのではないか。
ヨーロッパで、夫婦間でさえ性交渉の同意の有無が問われ、強姦としての告発が多発するようになっているのは、女性の人権の拡張として喜ぶべきことでは到底ないだろう。
女性側が同意なき性交渉をされたと主張さえすれば、物証も状況証拠もなくとも強姦の認定になるとすれば、どのような無理な訴えも可能になる。
私の見知らぬ女が、同室した証拠さえないのに、ある時間ある家屋に連れ込まれ強姦されたといきなり私を訴えた時、監視カメラもアリバイもなければ、私にはそれを否定する根拠はない。