山口敬之さんの連載『安倍暗殺の謎 第7回』を3月号に掲載しなかった理由を説明します|花田紀凱

山口敬之さんの連載『安倍暗殺の謎 第7回』を3月号に掲載しなかった理由を説明します|花田紀凱

「連絡がないままボツにした」「いくらでも直しますから、ボツはやめてくれ」……。『安倍暗殺の謎 第7回』を3月号に掲載しなかった件について、山口敬之さんは自らの番組その他であれこれ発言していますが、事実と異なる点が多々あるので、以下、経過を説明します。


3月号に掲載しなかった本当の理由

山口敬之さんは自身の番組「山口敬之チャンネル」(ニコ生)で以下のような発言をしています。

□2月4日生放送
「原稿を書いて入れたんですよ。そして、ゲラまでになったんですよ。ところが突然、花田編集長と私の担当の編集者から載せませんと言われて、私は納得がいかないから納得がいかないと言いましたけども、まあ、結果的に……」

「今回の原稿は私は非常に重要な意味合いを込めて書いたんですね。それは、安倍元首相の暗殺の真相究明に直接かかわる、ある種のモメンタムをつくる意図をもって書いた」

「どうしても出してくれと、原稿を変えてもいいと言ったけど出さなかった」

□2月25日生放送
「編集長の花田紀凱という人が、原稿の中身について引用が多いとか、なんかいくつか難癖をつけて掲載を見送るって言ってきたんですね」

「私はいくらでも直しますから、ボツはやめてくれと言ったんです。ところが、連絡がないままボツにしたんですよ」

「今回の原稿が載らなかったことによって、私が取り組んできた大きなプロジェクトが実はほぼ頓挫しようとしています」

「連載というのは毎号出るから連載なんです。それが出版社側の都合でね、原稿が間に合わなかったんじゃないんですよ、原稿を入れて校正、誤字脱字を直して、ゲラっていうのは最終的にこれでOKですとOKまでいったものをボツにしたんだから、私は私の真相究明を妨害する人たちとしか思えないんですね、もはや。ですからそれ以降、一切連絡をとっていません。謝罪するなら謝罪しなさいよ。それから原稿を載せなさいよ。直せって言うなら直すから」

「部外者に私と連絡がとれなくなったからボツになったと(花田さんは)嘘をついている。そんなことはないんですよ。直すところは直すからボツは困るというのが最後のやり取りですよ。ふたを開けてみたらボツになってたんですよ。花田さんがそういう人だと僕は思わなかったですよ。非常に残念だし、はっきり言ってしばらく顔も見たくないです。私が本当に苦労していたプロジェクトをぶち壊しにしたんだから。いろいろメールとかでいろんな連絡はくるけど反応する気がしませんね。こっちは真剣にやってんだから! 命懸けてやってんだよ!」

□3月3日生放送
「なんでこの話(『私が原稿を入れなかったというウソ』)をするかと言うとね、私が嘘をついていると言うから。ふざけるなと。私、嘘をついていたらジャーナリスト続けられないから。そういうことを言うんですか、花田さん。チャンネル桜の水島さんに『俺(山口さん)の原稿が来なかった』と言ったんでしょ? あなたは嘘つきだということをこの後で証明します」

「なんでボツにされたか、正直、わからない。(中略:番組で〝ゲラ〟を公開)。ページ数がありますよね。月刊誌のここにはまりますと、254ページから私の原稿がはまるという証拠なんですよ」

「校了が1月15日だと言ってたんですね。(中略)。そしたら(1月16日)、花田紀凱さんから電話がかかってきて、『今回の原稿はちょっと引用が多いですね』と言われたんですね、電話で。メールもそういうメールをいただきました。で、なんかザラッとしたから、私は今回の原稿は特にボツは絶対に困ると、だからもしなにか気に入らないことがあればはっきり言ってくれと。引用が多いのであれば減らせばいいんだから、こっちは、ただ単に。出ないのは本当に困ると、僕は口頭で伝えてます。そして、テキストでも伝えてます」

番組で私(花田)のメールを無断で公表
《今月号の件では、申し訳ありませんでした。物書きとしての山口さんには、期待しているのです。一度、ちゃんとお話ししたいので、都合のつく時を教えてください》(1月26日)

「ボツになったあと、1月26日だから。『今月号の件では、申し訳ありませんでした』。もしね、もし私と連絡とれなくなったんだったら、花田さん、謝る必要はないでしょ? もう、これ証拠なんですよ、申し訳ないけど」

「私がどうしてこんなに怒(いか)っているか。非常に重要なプロジェクトが今回の原稿がボツになったことで、大きなダメージを受けた。だから、私は許せないんですね。連載って言っているのにボツにすんなよ!」

「引用を削って来月号に載せてください。それでも私が受けたダメージは全然、回復されないけれども、四の五の言わずにそこまでやるんだったら謝罪と受け止めますよ」

山口さんのこれらの発言について、意図的かどうかはわかりませんが、事実と異なる点が多々あるので、以下、経過を説明します。

山口さんから原稿をいただいたのは、1月14日4時49分。山口さんの言う〝ゲラ〟を山口さんに送ったのは、同日23時46分。「問題ありません」と山口さんから返事があったのが、16日の16時35分です。番組で「校了が1月15日だと言ってたんですね」と山口さんは語っていますが、これは事実に反します。

1月16日22時ごろ、原稿の中身について山口さんと電話で話をしました。私が伝えた内容は「引用があまりに多いこと」、「その引用も精密さに欠けていること」の2点です。話の途中でしたが、一方的に電話は切られました――。

1月17日3時39分、担当編集者が「編集長ともう一度、話していただけないでしょうか」とメールをしましたが、それに対する山口さんの返信(同日9時10分、私信なので公開は当然控えます)を読んで、山口さんがあまりに感情的なのでこれは少し間を置いたほうがいい、このままではまともな話し合いができないと判断し、この時点で一号置こうと決断しました。

筆者から原稿をいただき、まず担当編集者が読む、編集長の私が読む、疑問があれば筆者に連絡し、疑問点をただし、話をして、納得がいけばそのまま掲載。納得がいかなければ筆者と相談の上、その部分を手直ししてもらう。これはごく普通の編集作業です。なお、ゲラに組んだ後(初校)も校閲、担当編集者、編集長が読み内容を精査します(再校、場合によっては念校)。ゲラに組んだものがすべて掲載されるなどということはありません。

「いくらでも直しますから、ボツはやめてくれと言った」と山口さんは語っていますが、山口さんからそのようなことは一言も聞いておりません。「いくらでも直しますから」と筆者から言われて、無視したり、断ったりする編集者などいません。少なくとも私は、しません。

今回の山口さんの原稿は、2022年9月に配信された「東洋経済オンライン」の『山上容疑者を凶行に駆り立てた一族の「壮絶歴史」』(前編)『統一教会からの「返金終了」が山上家貧窮の決定打』(後編)からの引用があまりに多く(本文350行中、直接引用は132行、引用解説は107行)、引用部分とその解説を含めると約7割に達していました(読売新聞の直接引用21行は除く)。

引用の多さだけではなく、引用も精密さに欠けること、その分析にも難があること――これは私ひとりが感じたことではありません。担当編集者、ほかの編集部員、ベテランの校閲者からも多くの疑義が呈されました。だからこそ、山口さんの意図を理解し、相談をするため、16日にまずは編集長の私が、電話をしたのです。

3月号(1月25日発売号)の編集作業がすべて終了したのは1月18日の2時でした。その後も何度も連絡しましたが、私への返信は一度もないまま、今日に至っています。ちなみに、担当編集者が1月30日に「直接会って話しがしたい」と伝えましたが、「なんの話ですか?」と山口さん。これ以降、彼からの連絡は一切ありません。

山口さんは我々から「載せません」と連絡があったと番組で語っていますが、そのようなことは一切言っていません。話し合いができないままなので、原稿は組置きにしているというのが現状です。

また、山口さんは番組でこう言っています。
「引用を削って来月号に載せてください。それでも私が受けたダメージは全然、回復されないけれども、四の五の言わずにそこまでやるんだったら謝罪と受け止めますよ」

引用を削れば原稿の体を成しません。そんな原稿を掲載すれば、読者に失礼です。自身の番組で一方的に文句を言うのではなく、山口さんはなぜ、我々と直接会って話をしないのでしょうか。

「Hanadaは圧力に屈した」と多数の意見が寄せられています。しかし、「東洋経済オンライン」で現在も公開されている記事を大量引用した原稿を掲載して、どこから圧力が来るというのでしょうか。事実、どの方面からも圧力など一切ありません。

旧知の水島総さんに電話をしたのは、「Hanadaが圧力に屈した」といったような全く事実ではない一方的な発言を水島さんが「チャンネル桜」で何度もして実害が生じていたので、「そうではありません」と伝えるためです。そもそも、「山口さんから原稿が来なかった」などと私が言うはずもありません。原稿が来ているからこそ、このような問題が発生したのではないですか。

私が山口さんに送ったメール(私信)を番組で勝手に公開していますが、1月26日のメールで、「今月号の件では、申し訳ありません」と書いたのは、掲載しなかったことへのお詫びではなく、社会人としての儀礼的なものです。

番組で勝手に公開した、山口さんの言う月刊『Hanada』のゲラなるものは、最終的なものではなく(校閲もまだ入っていません)、初校です。ページ数も仮であり、あとは印刷を待つだけの状態では全くありません。初校をチェックし、さらに再校、場合によっては念校までとり、ようやく入稿します。校閲のチェックすら経ていない初校をそのまま入稿するなど弊誌ではありません。

最後に、2月27日15時40分に山口さんに送った私からのメールを公開しておきます。

あちこちから漏れ聞く山口さんの発言を悲しく、残念な気持ちで聞いています。

ぼくはジャーナリストとしての山口さんを高く評価しています。伊藤詩織事件の当初から、一貫して、山口さんを信じてきました。何か少しでも山口さんのプラスになればと、応援してきたつもりです。

今回のこと、私も担当編集者(原文は実名)も掲載しないとは一度も言っていません。ファーストリーダーとして、読者に成り代わって、原稿に関する疑問を著者に聞く、編集者として当然のことと思います。

そこで、双方で話をし、納得がいけばそのまま掲載、いかなければ書き直してもらう。ごく普通の手順です。だから私は、山口さんがなぜ話し合いに応じていただけないのかわかりません。

連載がこのまま途切れてしまうのも、山口さんという優れたジャーナリストとの関係が切れてしまうのも、とても残念です。

一度、腹を割って、話をしませんか。

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