財産権の侵害で訴訟も
この後見信託については、士業への利益誘導という別の問題がある。
「後見信託の設定手続きは、信託銀行側が本人や家族に説明すれば、誰でもできる簡単なもの。ところが、その設定手続きを最高裁と家裁は弁護士、司法書士、税理士といった士業に独占させているのです。士業はこの手数料として、30万円ほどの報酬を被後見人の財産からもらえます。これについては親族後見人から“財産権の侵害だ”との抗議が上がっており、訴訟も起こされています」(宮内氏)
この設定報酬の問題も朝日連載は報じていない。
もっとも、監督人については先の朝日連載の第7回でさらりと触れている。それによると、7年ほど前から母親の保佐人をしている横浜市の主婦は、家裁に断ったのに司法書士の監督人をつけられた。監督人とは電話で数回、面会で一度やりとりし、作成した書類をチェックしてもらったら年14万円も取られたという。
実は、ここに登場した主婦は、17年7月9日の朝日朝刊の「オピニオン」欄に「母の財産管理、監督に14万円とは」という投書を寄せている。この主婦の投書は、「新聞が後見トラブルに触れた極めて珍しいケース」として、当時、後見業界で大きな話題になり、私も本誌連載や単行本、週刊誌で取り上げた。
ところが私が知る限り、朝日は投書掲載後、1年半以上も経ってから、ようやく投書をフォローする追跡記事を書いたことになる。当時は、問題の大きさがわからなかったのだろうか。朝日記者の情報感覚に疑問符をつけたくなる。
朝日新聞は最高裁の広報誌か
最後に、4月3日の朝日朝刊が報じた「成年後見 報酬見直し促す 最高裁 業務量・難度に応じて」という記事にも一言。
これまでも必要性のない出張を行うなどして業務量を増やし、余分な報酬を取った士業後見人がいた。そうした不正が行われないか、心配だ。
宮内氏も言う。 「最高裁、家裁が法曹界仲間の弁護士、司法書士ら士業への利益誘導の態度を改めない限り、事態は何も変わりません」
朝日の影響力は大きい。最高裁の広報紙ではないのだから、朝日にはぜひ、こうした点を掘り下げて報道してもらいたいものである。