風の吹き渡る街
尾道の街には、風が吹き渡っている。
「ねえ、これだからクーラーは要らんのよ」
中華そばを食べる箸を止めて、どこに扇風機がついているのかと見回している私に、「つたふじ」の女将さんがにこにこしながらそう言った。ここは尾道ラーメンの名店のひとつ。
6月とは思えないほど冷たくて心地よい風が、開け放しになっている店の裏口から、同じく開いたままの入り口へ、ふいっと抜けていったのだ。カウンター席にぎっしり一列に座っているお客の背中をなでて、店の前で行列をつくっている人たちの鼻先をかすめて。
裏口からは見えないけれど、こっちの方角は海だ。これはきっと、海から吹いてくる風なのだ。
「つたふじ」の中華そば

