【猫は友だち・番外編3】尾道で私が「風」に呼び止められた話|瀬戸内みなみ

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尾道に残る林芙美子と猫の“足跡”


風の吹き渡る街

 尾道の街には、風が吹き渡っている。
「ねえ、これだからクーラーは要らんのよ」
 中華そばを食べる箸を止めて、どこに扇風機がついているのかと見回している私に、「つたふじ」の女将さんがにこにこしながらそう言った。ここは尾道ラーメンの名店のひとつ。
 6月とは思えないほど冷たくて心地よい風が、開け放しになっている店の裏口から、同じく開いたままの入り口へ、ふいっと抜けていったのだ。カウンター席にぎっしり一列に座っているお客の背中をなでて、店の前で行列をつくっている人たちの鼻先をかすめて。
 裏口からは見えないけれど、こっちの方角は海だ。これはきっと、海から吹いてくる風なのだ。

「つたふじ」の中華そば

枯山水の庭の前に黒猫が

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