【読書亡羊】「道産子アメリカ人」が静かに鳴らす警鐘が聞こえるか  ジョシュア・W・ウォーカー『同盟の転機』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


日本が、アメリカで生じている新たな環境の中で生き延び、トランプ大統領が主導している革命に対応しようとするならば、アプローチを変えなければいけない。

ではどうすればいいのか。

〈日本にとって、こうしたアメリカ国内の変化は、日米同盟や貿易取引が外交官や大臣だけで処理できなくなったことを意味する〉と述べ、必要なのはアメリカ政府ではなく、各州や町、地元コミュニティや企業など「草の根のアメリカ」にコミットすることだと指摘する。

日米関係というと外交、同盟関係を想起してしまうが、実はこうした草の根的連携は経済界ではすでに始まっているのだという。例として、トヨタや伊藤園、ダイキンや公文式などアメリカに進出して根を下ろしつつある企業が紹介されている。

中でも面白いのは日本酒「獺祭」をニューヨークで醸造し始めた旭酒造だ。

2023年に工場を開設、アーカンソー州産のコメとハドソン川の水を使い、日本の最新技術と職人技で日本酒を作り出す。そしてその酒がアメリカの各地で愛飲されるようになっているというのだ。しかも、それは単に企業連携、酒の販売拡大というだけではない価値を生んでいる。

最も効果的な外交は、今や大使館ではなく、お茶の試飲室やカフェで展開され、人々の会話を通じて行われることを示したのである。

日本のソフトパワーの真の価値とは

著者は他にも、日本のソフトパワーの力にはまだまだポテンシャルがあることも指摘する。マリオ、ポケモン、ドラゴンボール、NARUTOなどアニメやゲームのキャラクター一体一体、一つ一つの作品やその世界観が、まさに外交官や首脳外交に匹敵するパワーを持っているとする。

それらのキャラクターや作品は現状でも世界各地に多くのファンを持つようになっているが、著者はアメリカとの協働によって、より広く遠くへ届けることができるという。

確かに、日本のアニメはアメリカ発の動画配信サービスであるNetflixのプラットフォームに乗ることで、より手軽に、より多くの人に届くようになった。さらにはハリウッド映画化などの力も、日本発の作品を拡張・拡散することにつながるだろう。

なぜ日本のコンテンツのより一層の拡散が必要なのか。著者の解説には熱がこもる。

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書評 読書亡羊 梶原麻衣子

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