真昼の暗黒! 対家庭連合特別法|杉原誠四郎

真昼の暗黒! 対家庭連合特別法|杉原誠四郎

令和五年に、対家庭連合(旧統一教会)に対する特別法が制定されたが、実はこの法律にはとんでもない規定が並んでいた!


テロリストに報酬を与えた

ここで、筆者が「対家庭連合特別法」と名づけた略称「特定不法行為等被害者救済特例法」の成立までの過程を簡単に復習しておこう。

令和4年7月8日、安倍晋三元首相が狙撃されて斃れた。直後、犯人山上徹也は狙撃の理由として、家庭連合への恨みをつぶやいたことが世間に伝わり、家庭連合への批判が炎上し始めた。

本来ならば、テロリストの願望に応えるようなことは「テロに報酬を与えてはならない」という鉄則の下に絶対にしてはならない。だからこそ、山上のつぶやきには極めて冷静に対応しなければならなかったのだが、岸田文雄首相(当時)はこれに乗っかる形で、河野太郎内閣府特命担当大臣と家庭連合にかかわる被害の調査委員会を立ち上げた。

そして10月17日、岸田首相は解散命令を視野に入れて、文科大臣に家庭連合への調査を指示。10月19日には、解散事由に民法の不法行為が入るとし、解散命令を出す方向に舵を切った。

まさに、テロリスト山上にこれ以上ない報酬を与える方向に舵を切ったのだ。

そうしたなか、12月10日には略称「不当寄附勧誘防止法」なる「法人等による寄附の不当勧誘の防止等に関する法律」が成立。この法律自体は、宗教法人にかかわる行き過ぎの寄附勧誘行為などを抑制するためのものだから、成立自体にはそれほど問題はない。

が、文科省は精力的に調査を進め、翌令和5年10月12日、宗教法人審議会に、悪質性、継続性、組織性があるとして東京地裁に解散命令を請求する旨を語り、審議会の全会一致で承認を得て、翌13日、文科大臣は東京地裁に家庭連合への解散命令の請求を行った。

そして令和7年3月25日、東京地裁は解散命令を決定した。

山上徹也

法律のネーミングが悪い

問題の、特定不法行為被害者特例法なる「対家庭連合特別法」は、令和5年12月13日に制定され、同月20日に公布、翌令和6年3月19日に施行となった。

前述のとおり、被害者の被害が決定しても、宗教法人の側で財産の移動がなされたりして弁償するための財産が無くなっていてはいけないというのは、一理ある法律だといえるのだけれど、その条文にはとんでもない規定があるのだ。

まず、ネーミングがおかしい。法律名にある「特定不法行為等」は、法律のなかで「特定解散命令請求等の原因となった不法行為」という説明が入っているが、文科省の解散事由となった被害者の被害報告にある被害なるものは、そのまま不法行為になるわけではない。法的に吟味して、不法であることが明らかとなってから初めて「不法行為」となるものだ。だから、法律として被害報告の全てが「不法行為」に読めるようなネーミングにしてはならない。

そして、「特定不法行為等に係る被害者が相当多数存在することが見込まれるとき、『指定宗教法人』として指定できる」とし、さらに条件を家庭連合のケースに近づけて「特別指定宗教法人」として特定不法行為に係る被害者は、家庭連合の財産等書類の閲覧ができるとしている。

被害者と名乗っているものの法的に被害者とは定まっていない者に、なぜ内部の重要な書類を閲覧させなければならないのか。また、こうした内部の書類は外部の者の閲覧を拒否するのが一般的な法秩序であろう。

税務署が特定個人の財産状況を把握していても、それを外部の人の閲覧に供するのは許されないだろう。なのに、なぜ家庭連合に限って、まだ被害者として定まっていない者に閲覧させてよいのか。法の常識として考えられない。

また、本法は被害者と名乗る者への法律支援、つまり民事裁判を容易に起こせるように国の機関である日本司法支援センターなどの支援を促進させるとしている。しかし根本において、対家庭連合の場合の被害者のみ、なぜこのように優遇されなければならないのか。

文科省の解散事由によれば、特定不法行為等に係る被害者が相当多数存在することが見込まれるから「特定宗教法人」の指定となったのだが、それはもともと文科省の解散命令請求の根拠とした解散事由は端的に言えば恣意的に創作したものであり、印象操作によるものではないか。

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