真昼の暗黒! 対家庭連合特別法|杉原誠四郎

真昼の暗黒! 対家庭連合特別法|杉原誠四郎

令和五年に、対家庭連合(旧統一教会)に対する特別法が制定されたが、実はこの法律にはとんでもない規定が並んでいた!


被害報告を全て認めるのか

Ⅰ、1(1)本指針の趣旨・目的の「特定不法行為」について

「特定不法行為」については、本指針の注記にあって、「特例法第二条第二項に規定される、特定解散命令請求等の原因となった不法行為、契約申し込み等の取消しの理由となる行為その他の行為及びこれらと同種の行為であって、特定解散命令請求等をされた宗教法人又はその信者その他の関係者によるものをいう」とある。

が、端的に「特定解散命令請求等の原因となった不法行為」だといっても、それは被害者と名乗る者が被害として申告したものに過ぎない。

本来宗教法人に係る「不法行為」とは、信仰を有する者が金品を宗教法人に送ったとき、受ける側の宗教法人に不当な行為があった場合に限られる。宗教法人に向けての金品の寄贈は、信仰時に信仰に基づいて寄贈した場合は、後に信仰を失ったとしても返還を求めることはできないはずである。

また、被害者として訴える資格のある者は、金品を寄贈した者に限られる。例外として巨額の金品の寄贈によって、生活が困難に陥った親族は被害を訴えることができると考えられるが、その場合は本人がその損害を実証しなければならない。

すなわち、文科大臣が解散事由として提出した被害報告書にある被害は、被害者と名乗る者の被害報告だけであって、法的には不法行為として法的に確定したものではない。

法的に確定するには公開の裁判によって判決を得て確定するのが原則であるが、その他に許容される解釈の範囲内でいえるものとして、和解によって支払った和解金、あるいは解決金などによって解決した場合も不法行為として含まれるが、その他は不法行為として確定していない。

また、過去において裁判によって不法行為と認定され、それなりの賠償をしたもの、あるいは和解によって和解金や解決金を支払ったものは、すでに解決済みとして、今回の賠償からは外れる。

とすれば、被害者と名乗る者の報告だけで不法行為とすることはできるはずはなく、被害者と名乗る者の報告のうち不法行為として成立するものは極めて限定されたものになる。

にもかかわらず、本指針ではあたかも被害者と名乗る者の被害の報告の全てに損害賠償をするように読める。これは上記のとおり「特定不法行為等」と称して行う窃盗であって、現行憲法下、法治主義の下、ありえないことである。

文科大臣が提出した解散事由として集めた報告書には、本人でない者が報告したり、本人の言っていないことを言ったこととして記されている例が多数報告されており、文科大臣が東京地裁に提出した解散事由はとうてい信頼がおけない。

そのことを公開の場で明らかにするためにも、文科大臣が東京地裁に向けて解散命令の申請を行ったとき、家庭連合の側は行政訴訟を起こすべきであった。

ともあれ、不法行為として何らかの法的に確定する手続を経ていないものにも、不法行為として損害賠償の対象とするのは、法治国家、法の支配の下、ありえない話であり、本指針は根本から改められなければならない。

そしてさらに言うべきは、その報告によってなしたところの「特定不法行為等」のうち、法的手続を経て不法行為と認定するための規準は、被害者が相当多数いることとは関係なく、他の宗教法人の場合と寸分たがわず、完璧に同一の規準でなければならない。

盛山正仁文部科学大臣(当時)

原則を侵した法律

Ⅲ、附則第五条の有効期限について

本指針案は、解散すれば事由はなくなるので有効期限について特に規定はないが、本指針の根拠となる特例法には、附則第五条で「この法律は、この法律の日から起算して三年を経過した日に、その効力を失う」とある。

ということは、この法律は事実上、宗教法人家庭連合(旧統一教会)のみを対象とした法律ということになる。一般法ではなく、特定の対象のみに限定した特別法としての立法は、対象の側に利益がある場合は許されるが、不利益になる場合は立法できないというのが法治主義、法の支配の原則である。この法律は、この法治主義、法の支配の神聖なる原則を侵している。

本法は、その点でも法治主義の下、あってはならない法律であり、本指針の検討は本法特例法に遡ってその有無のところまで検討し、特例法は廃止しなければならない法律であることを確認すべきである。

法とはそもそも可能性の中の選択である。可能であることの中から、あることはしてよい、しなければならない、あることはしてはならないと、可能性の中の選択であるが、可能であっても選択してはならないことがある。

ある人に向けて遡及して刑を科すことは許されない。ある人の不利益になることを法の制定以前に遡った案件に適用するような法律は制定してはならないという遡及禁止の原則がある。

こうした原則を踏まえなければ真正の法治主義、法の支配ということにはならない。その法治主義、法の支配を踏まなければ、法治国家という国家にはならない。法治主義、法の支配の下、特定個人、特定団体に不利益となる特別法は制定してはならないのである。

特例法では、家庭連合に対して無期限に遡って被害者と名乗る人の被害の報告を求めることを前提として解散命令を求めることになったが、一般法としては、それは他の宗教団体にも同等に適用できるようにしたものでなければならない。

そして何らかの罰則を付した場合は、その適用はその法律の施行以後の案件に適用するものでなければならない。

そうではなく特定の宗教法人のみを対象として不利益を与える特別法は、法治主義、法の支配、法治国家の名の下に制定してはならないのである。したがって、この特例法は廃止されなければならない法律であることは自明である。

このような法律の制定を認めた衆議院法制局、参議院法制局、国会は、通常の法的常識では考えられないことをしでかしたことになる。

(コメントはここまで)

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