【読書亡羊】「麻辣強国」VS「マサラ強国」…米中印G3時代への準備はいいか  中川コージ『インドビジネスの表と裏』(ウェッジ)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


ストレスフルなインド社会

本書ではインドビジネスのみならず、ビジネスをするにあたり知っておかなければならないインドの権力構造や選挙情勢、現地でのサバイバル生活まで網羅しており、目配りの効いた一冊になっている。

インド人はパーソナルスペースが狭く、列に並ぶ際にも〈日本人ではありえない距離感で体を詰めてきよる〉し、ビジネス上の「納期」には全く無関心だという。聞くだけでも日本人にとってはかなりストレスフルな条件がそろっている。

中川氏自身のインド生活に関するSNSでの発信を見ていても、電気が断続的に停電する、工事を依頼しても予定通りには来ない、騒音が夜通し外から聞こえてくるなど、タフでなければ飛び込めない社会だとわかる。

外交的にも注目すべき点がある。

日本は戦後賠償の代わりに中国に長年ODA支援を行ってきたが、これに対する中国からの感謝はないばかりかODA支援が行われていたこと自体を中国は自国の国民に伝えていない。一方、日本は世界第二位の対インドODA供与国だが、中川氏はここで注意を促す。

 残念ながら、経済成長した後にますます日本に対して粗暴な態度を取るようになった中国については、我々日本世論が、そのような(ODAに対する感謝を忘れたのか、などという)批判をしたところで後の祭りでした。これから成長していくインドに対して同じ轍を踏んではなりません。

 相手国に対しての支援は何かを供与して終わりではなく、見返りのあるなしに関わらずしっかりと「相手国の国民に、日本からの支援があったということを周知させようとする相手国政府の真摯な態度」を適宜チェックし要求していくことは重要なはずです。

今はにっこり笑顔で「ナマステ」なインドも、経済成長によって自信を付ければ、その態度は豹変しかねないのである。

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