【読書亡羊】韓国社会「連帯」と「分断」の背景に横たわる徴兵制の現実とは  金柄徹『韓国の若者と徴兵制』(慶應義塾大学出版会)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


アイドルの徴兵が国会の議題に

徴兵制という、日本ではかなり重く響くテーマを扱った本書だが、「はじめに」はこんな一文から始まっている。

韓国ではデートの際、女性が嫌がるトップ3の話題があると言われているが、皆さんはその三つがわかるだろうか。

答えはぜひ、本書の冒頭をめくって確かめてもらいたいが、この答えそのものが、いかに韓国の若き男女にとって軍隊と徴兵制が避けては通れないものであるかがわかる。

『韓国の若者と徴兵制』(慶應義塾大学出版会)の著者、金柄徹氏は自身も兵役経験を持ち、南北境界線にある板門店での警備を担当したのちに文化人類学者となった。徴兵制がどのように韓国社会に根付き、様々な葛藤や問題、そして連帯を生んでいるかをまとめている。

新書サイズのコンパクトな一冊だが、徴兵という難関を乗り越える男女の若いカップルの葛藤や、兵役によって失われるもの、得られるものなどのリアルな状況を垣間見ることができる。

日本でもK-POPアイドルの男性メンバーが徴兵で入隊するなどという時には、その模様がワイドショーなどで報じられることがある。日本からもファンが「お見送り」に行ったりするなど、社会的にも大きな関心事となった。

本書でも「BTS」のメンバーが入隊する年齢が近づいた際に、国会を巻き込んで「兵役を免除するか否か」の大騒動になった旨が書かれている。世界的アーティストになったBTSは兵役よりも芸能活動を続ける方が国益になるとの観点から、「兵役特例の付与」により徴兵を免除すべきだとの法案が、国会に提出されたのだという。

結局メンバーが軍隊に入隊したことで議論は下火となったが、徴兵制のない日本では生じえない議論であった。

韓国の若者と徴兵制

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