【読書亡羊】雑誌「冬の時代」が過ぎて春が来る?  永田大輔・近藤和都(編著)『雑誌利用のメディア社会学』(ナカニシヤ出版)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


習近平が弾圧するアニメ・BL雑誌

一方、第五章で取り上げられる董 鎧源氏の「新作日本アニメの受容に中国のアニメ情報雑誌が果たした役割」は、全く知らない現地での状況が語られていて実に興味深い。

1978年の改革開放以降、1990年までは中国で日本のアニメが放映されており、『鉄腕アトム』は中国でも大人気だったという。だが2008年に外国製アニメの放送が全面的に禁じられてしまう。

その後も中国のアニメファンは海賊版DVDやウェブ上の違法を含むアップロードデータで何とか視聴を続けていたが、テレビ番組のようにいつどの作品が放映されるなどの番組表があるわけではない。ファンはどのような作品があるのかなどの情報は、もっぱらアニメ雑誌によって得ていたのだという。

『動新』というアニメ情報誌の読者欄のコメントが取り上げられているが、これがなかなかふるっている。

(雑誌は)私がアニメを購入する方向を指し示してくれます。そして雑誌本は「画集」として鑑賞に使用することもできるし、必要な時には「資料」として調査に使用することもできます。

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インターネットが未成熟だった21世紀初頭の中国で、日本のアニメの情報が得られる雑誌が、いかに読者にとって貴重なものだったかが窺える。

2000年代後半に入ると、ボーカロイドやBL、アニメソングなどさらに細分化されたジャンルの専門誌が続々登場。日本発のものを多く含むアニメ関係の文化が、中国で大きく花開いた時期だった。

ところが、2013年、そうしたアニメ雑誌文化は突如として終わりを迎える。習近平政権が誕生したためだ。

2003年から2012年までの胡錦濤政権下では、改革開放路線の継承で「おとがめなし」とされていたのだが、習近平政権の方針により全国のアニメ情報雑誌は差し押さえられてしまった。現在、アニメ雑誌はわずか一誌しか存在していないのだという。

習近平政権の取り締まりは文化にも及んでいる。2025年7月には、BL作家200人以上が一斉に摘発されたとも報じられている。

まさに雑誌は、中身だけでなく存在自体が時代を映す鏡でもあるのだ。

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