自衛隊と葬祭業の協定とは
協定書では第1条に総則として「各種災害並びに武力攻撃事態等及び存立危機事態が発生した場合に備え」全葬連と陸自の連携・協力に関し、必要な事項を定めるとしている。
そして以下、第2条(連絡体制の確立)、第3条(情報共有)、第4条(連携・協力業務)、第5条(情報管理の徹底)、第6条(協議事項)、第7条(有効期限)の全7条で構成されている。
協定の核となる具体的な業務内容は第4条に6項目にわたって記載されている。
①全葬連は陸自が行う遺族対応、殉職隊員の葬儀に関する相談、葬儀社の紹介、ご遺体の安置・保管、還送等について協力
②全葬連は陸自の依頼に基づき、必要な資材(納体袋、棺、保冷資材等)の確保について協力
③全葬連は陸自の依頼に基づき、陸自が行う訓練等における専門的知見からの助言等について協力
④全葬連は、陸自に対し葬祭業(家族通知、遺体・遺品の引き渡し及び遺体の修復における遺族対応、エンバーミング、葬儀等)に関する講義の実施について協力
⑤平素からの意見交換による相互の連携
⑥その他、全葬連及び陸自が相互に応じられる事項
このうち①の「殉職隊員の葬儀」について、自衛隊内の事案とも言えるが、その他の項目は自衛隊内に限定したこととは限らない。第1条(総則)の筆頭に「各種災害」とあるように、自衛隊員が直面する死者は災害犠牲者のような一般国民も含まれているからだ。
災害出動となれば、自衛隊は警察や消防と手分けをしながら、遺体捜索という任務も担うことになる。その際に必要となる心構えや知見、技量を平時から身に着けておくことが求められる。そのための協力協定だといえるだろう。共産党の赤旗が掲げる「多数の戦死者想定」とか「戦争する国づくり」などという主張は、うがった見方どころではないとんでもないねじ曲げだ。
なにがなんでも海外での戦争に結び付ける
27日付赤旗の第2報が見出しに掲げた「国外で戦死想定」の根拠になっているのは、記事中に登場する東京都内の葬祭業者の「業者に頼まず陸自が自前でエンバーミングを行うと読めます。国外で死者が出ることに備えたものではないか」というコメントだ。国内の大規模災害で多数の犠牲者が出ることになれば、自衛隊がエンバーミング(遺体の防腐処理)を担う場面も想定される。にもかかわらず、なにがなんでも海外での戦争に結び付けようとしているのだ。
「陸自が自前で…」だから「国外で戦死…」と言う一方で、16日の第一報では弁護士の「南西諸島を戦域とした『台湾有事』は、中国を想定した戦闘で、多数の自衛隊員の戦傷死を想定せざるを得ません。その数が自衛隊では対応できず、業界団体の協力が必要という結論になったと思われます」というコメントを紹介し、「自衛隊では対応できず」が「国外で戦死」想定の根拠とされている。戦死者が出るような国外での戦争を準備しているという結論は一貫しているのだが、その主張の根拠は「自衛隊が自前でやるから」と「自衛隊だけでは出来ないから」というまるで逆のことを言っている。