中国は台湾周辺海域全域で軍事演習
なお、日本については演説で触れられなかった。これは4年前の蔡英文総統の2期目の総統就任の演説と同様であるが、8年前の蔡英文新総統の就任演説では、日本について触れていた。
日台関係は揺るぎないものであるが、米国は「台湾関係法」により、外交関係や軍事協力について関係性が定められている。「台湾有事は日本有事」であり、我が国においても日本版台湾関係法の制定が求められる。
こうしたなか、5月23日に中国は台湾周辺海域全域で軍事演習を始めた。中国軍報道官は「これは『台湾独立』の分裂勢力が独立を企てる行為に対する強力な戒めだ」と述べた。これに対し、台湾国防部は「理性がない挑発、地域の平和と安定を破壊する行動だ」と中国を非難した。早速、頼新総統就任に合わせて中国は軍事的に威嚇をしてきた。
さらに今後、中国は台湾侵略の前段階にあたって、エネルギーの兵糧攻めをすることが考えられる。今回のような台湾周辺全海域での軍事演習や、おととし8月のように台湾を取り囲むようにミサイルを撃ち、それを継続すれば、台湾には船も飛行機も入れなくなる。
台湾のエネルギー資源の備蓄は実は極めて手薄であり、台湾の電力の8割は天然ガスと石炭でまかなっているが、備蓄は天然ガスが11日間、石炭は1〜2カ月程度であり、実質的な海上封鎖が行われれば、とても苦しい状況となる。
5月23日の中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた。以前も述べたことであるが、中国は侵略を始める前には海上封鎖とともに、台湾でテロを起こし、反政府デモを起こし、「頼新政権は台湾をしっかり統治できていない」として、治安維持名目で台湾に中国軍が侵略することが考えられる。
日本は台湾を断固守り抜く意志を表明し、中国を抑止すべきである。
著者略歴
1974年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業(日本外交史)。1997年、アナウンサーとしてNHKへ入局。新潟局、帯広放送局、大阪放送局を経て、2009年7月より仙台放送局に勤務。東日本大震災の報道や取材に携わる。2013年、第23回参議院議員選挙において、宮城県選挙区で初当選。2019年、全国比例区で再選。