ミツカン「種馬事件」、再び、敗訴|西牟田靖

ミツカン「種馬事件」、再び、敗訴|西牟田靖

2013年、中埜大輔さんは、ミツカンの創業家出身のオーナー経営者である中埜和英会長の次女、聖子さんと結婚、翌年には男の子が誕生した。だが、彼の人生は義父母によって破壊された。生後4日目の子供を義父母の養子に差し出すよう強要されたのに始まり、別居の命令、離婚の強要、親子引き離し(実子誘拐)を目的とした日本への配転、告発報道の取材に応じたことを理由に即日解雇――。まるで中埜一族に「種馬」のように使われ、放り出されたのだ。


離婚するか、ミツカンを離れるか

判決についての法的な解説は野崎智裕弁護士からなされた。

「今回の内容は特に相手方であり、中埜大輔さんの元妻である、中埜聖子さんのですね、特殊な環境、そういったところを非常に過度に重視したような判決だと思っています。聖子さんについて『その人生に関わる選択においても、おのずと中埜家の跡取りとの視点からの選択を行うことが当然のこととなっており』と書かれていました。つまり『聖子さん自身の心情ないし価値観に基づく離婚意思の形成がされた』と裁判所が判断したことになります」

ミツカンは一子相伝で、跡継ぎが財産を受け継ぎ、次世代へと引き継いできた。跡継ぎである聖子さんは、ミツカンを背負う存在として小さい頃から帝王学を授けられ、育ってきた。そうした特殊な事情を抱えた聖子さんの価値観が離婚の判断に繋がった、だからこそ、聖子さん自身の判断だと裁判所は解釈したのだ。

「かなりの財産を聖子さんが引き継いでいます。半分以上といっていいと思いますが、そういった特殊な事情のなかで、今回、聖子さんの両親は、『中埜大輔さんと離婚するか、それともミツカンを離れるかどっちだ?』という判断を聖子さんに迫り、聖子さんはミツカンに残る選択をしました。その選択を以て、『ミツカンの一子相伝の環境で育てられ、その価値観が聖子さんに定着している。だからそれは聖子さん自身の意志』と裁判所は判決文のなかで説明しています」

重要な点をおさらいしておこう。判決では次の点が認められている。

・和英・美和氏が聖子さんに二者択一の判断を迫った際、高圧的な態度をとったこと
・そのことが聖子さんの判断に影響を与えた可能性があること
・大輔さんと聖子さんの間に愛情があったこと

和英・美和氏の高圧的な態度が聖子さんの判断に影響を及ぼしたのだとしたら、それは脅迫にあたらないのだろうか。

「法的にいえば、『聖子さんの両親がやったことは不法行為ですというところを否定していない』んです。ただしその不法行為があったとしても、その結果として離婚に繋がったのかっていうところを否定している――法的にはそういう整理になるのかなと思います」

「ミツカンを守るのが絶対。だから愛情があっても、離婚せざるを得なかった」と聖子さんが考えていたからといって、和英・美和氏の行為を不問に付すのはおかしい。和英・美和氏が、高圧的な態度で二者択一を迫らなければ、聖子さんは離婚という決断をしなかったに違いないからだ。

次のステージは、英国での戦い!

今後の展望について、大輔さんは次のように語った。

「現在、英国に息子がいると思われますので、英国の司法制度を利用して、息子に会うために、戦いの場を英国に変えていこうと考えております。そのための準備も進めておりますし、近いうちに法的措置をとるつもりです」

英国で実子誘拐をすれば、たとえ母親父親であろうとも逮捕・投獄される。子供の権利を重視する英国で、日本と同様の裁判を起こせば十分に勝機はあるだろう。

「私が英国の司法制度を利用し、息子にすぐに会えたとすれば、これは日英の親子法制の大きな違いを浮き彫りにすることができますし、どちらの国が子供の権利をより尊重しているかも明らかになるでしょう」

大輔さんの戦いは、社会的意義が非常に大きい戦いである。ジャニーズ問題同様、「外圧」がなければ変われないというのは非常に情けない話だが、大輔さんが英国で勝訴すれば、日本でも実子誘拐が本格的に社会問題化されるのではないか。

ただし、そこには費用という大きなハードルがある。大輔さんは長年、孤独な戦いを続けてきが、多額の費用をこれまで通り、自腹でまかなうことが難しくなってきた――。

「英国での戦いの費用の見積もりは、過去の経験を基準として、親子交流権の回復の裁判で200〜400万円、ミツカン(創業家)に対する裁判で500〜1000万円です。2018年に私が英国で戦って勝訴(親子の交流権を求める裁判。詳細は2022年9月号『ミツカン「種馬事件」②家族破壊工作の全貌』を参照)した際には300万円近くかかりましたが、現在は当時より円安のためさらに2〜3割の追加費用が想定されます。まずは息子に会うための戦いを優先し、その先には、ミツカン(創業家)に対する英国での裁判を視野に入れています」

こうしたことから、彼はこのたびカンパを募集することにした。
詳細はこちらである。

対ミツカン事件のカンパを募集いたします|中埜大輔

https://note.com/nakanodd/n/n6a02640fce83

カンパ先は文末に記載します。全文をお読みいただき、ご同意いただける方のみお願いします。 ①使い道 僕と生後間もない息子がミツカン(創業家)によって組織ぐるみで引き離された事件【ミツカン父子引離し事件】(←まとめ記事に飛びます)について、ミツカン(創業家)と闘うための弁護士費用、訴訟費用、関連経費に充てさせていただきます。 具体的な使い道は、 ・対ミツカン裁判(日・英) ・対ミツカン創業家裁判(日・英) ・親子交流権の回復に向けた裁判(日・英) ・ミツカン(創業家)による反社会的行為の周知(日・英・米、等) ・ミツカン(創業家)の反社会的行為を幇助した人物・組織に対する裁判 ・上

関連する投稿


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

衆院選が終わった。自民党は過半数を割る大敗で191議席となった。公明党も24議席となり連立与党でも215議席、与党系無所属議員を加えても221議席で、過半数の233議席に12議席も及ばなかった――。


衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるなか、本日9日に衆院が解散された。自民党は総選挙で何を訴えるべきなのか。「アベノミクス」の完成こそが経済発展への正しい道である――。


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

8月23日、青山繁晴さんは総裁選に向けた記者会見を行った。最初に立候補を表明した小林鷹之さんに次ぐ2番目の表明だったが、想定外のことが起きた。NHKなど主要メディアのいくつかが、立候補表明者として青山さんを扱わなかったのである――。(サムネイルは「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」より)


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。