台湾国防部長「最近の敵情は異常だ」
中国の台湾侵略への危機が高まっている。中国はいつでも台湾侵略に着手できる状況まで来たと警戒すべき段階となった。
中国の戦略は、侵略を狙う相手国に対し、尖閣諸島でもそうであるが繰り返しかつ徐々にエスカレートさせ、最終的に相手国や国民の感覚を麻痺させた上で、一気に相手国を侵略することである。この戦略において、台湾周辺での中国の行動は極めて強まってきている。
10月10日の台湾の建国記念日にあたる「双十国慶節」にむけた威嚇であるとの見方もあるが、私はそれ以上の危機を想定しておかなければならないと考える。現状は、今にも台湾侵略が起きてもおかしくない段階だ。
台湾国防部(国防省)の発表では、今月18日午前7時までの24時間に、103機の中国軍機が台湾周辺で活動した。103機の活動は過去最多であり、うち40機は台湾海峡の中間線を越えて侵入し、戦闘機に加え、早期警戒管制機と空中給油機が、台湾南東部に回り込む動きを見せた。
さらに、22日には国防部長(国防相)が、台湾周辺で中国による「異常」な動きが見られると指摘した。対岸の福建省で中国軍の水陸両用部隊の上陸演習が行われたとの見方を示し、「最近の敵情は異常だ」と述べた。
そして、福建省の地上部隊などについて「台湾軍は動向を監視している」と述べた。中国軍の上陸演習は随時行われてきたが、今回は地上部隊が大規模に集結して行われたと台湾は分析している。
これら中国軍の動きは、台湾侵略に向けた段階を引き上げていると見るべきである。来年1月の台湾総統選で、中国にはない「民主的な選挙」により民進党の頼清徳氏が選ばれる、もしくは選ばれるような状況になれば、後述するように中国は勝手な理由を付け、台湾侵略に着手することが考えられる。
中国の侵略を助ける、玉城知事発言
今月に入り、中国とロシア、北朝鮮の関係を強化しようとする動きが活発化している。中国の台湾侵略にあたっては、ロシアと北朝鮮が支援する可能性が高い。
特に我が国は、台湾侵略と同時に行われるであろう尖閣侵略、南西諸島侵略に備えるとともに、我が国に対する北朝鮮による攻撃、ロシアの侵略にも備えなくてはならない。これら3国の連携強化は、“何か対岸で行われている外交交渉”ではなく、我が国にとって脅威であるとの認識が必要である。
台湾をめぐる中国軍の動きとこれら3国の連携は、もっと我が国で報道されるべきであるが、報道機関はその重要性が分からないのか台湾侵略危機と絡めて報道されることがほとんどない。まさに中国の狙いである、繰り返し行うことで相手国民の感覚を麻痺させる戦略にはまっているのである。
しかも、こうした状況であるのに沖縄県の玉城デニー知事は、ロイター通信のインタビューで「米軍基地の集中だけでなく、自衛隊の急激な配備の拡張が住民の理解を得られないまま急がれている。そのことが不測の事態につながることがあってはならない」と述べている。玉城知事は、台湾侵略、沖縄侵略危機に備えければならないのに、中国の侵略を助けるような言動を繰り返している。
中国の王毅外相は18日、ロシアを訪問してラブロフ外相と会談した。会談の冒頭、王毅外相は「覇権主義や陣営の対立といった逆流が激しくなればなるほど我々は大国のふるまいを示し、果たすべき国際的な責務を履行しなければならない」と述べた。
これに対し、ラブロフ外相は「世界情勢における正義を確保するために中ロ両国の協力は重要だ」と返した。この両者の言動は極めて不穏当であり、中国による台湾侵略や、ロシアの日本侵略における理由付けにつながる発言である。
中国は台湾侵略において、「台湾が米国等と連携し独立工作をし、中国領土の分断を図っている。ひとつの中国を守るため、限定的に軍事作戦を実施する」との名目で侵略を開始することが想定され、中国自体が覇権主義であるのに、「覇権主義への対抗」という勝手な正当性を今回の会談でも中国は掲げた。
また、ロシアが言う「世界情勢における正義の確保」は、ウクライナ侵略のみならず、台湾防衛に日本が参加した際、ロシアが日本侵略を始める口実に使われる可能性がある。米国と日本が紛争を生み出していると主張し、「正義の確保」の名のもと日本侵略を始めるのである。