9月16日には日本共産党仙台青葉地区委員会(@jcpSENDAIaoba)が「汚染水の海洋放出に反対します」と題したポスター風の画像をXに投稿した。画像は海辺で遊ぶ幼い二人の男児の写真に次のようなポエムが添えられている。
「初めての海/楽しかったね/でも/もう最後なの?/もう海には入っちゃダメなの?/お兄ちゃん/お魚さんはいいの?/僕も悲しいよ。/魚も海も地球も」
この画像は同日の13時38分に投稿されたが、瞬く間に非難が殺到し、数時間後には削除された。投稿主は削除理由を明らかにしていないが、「お魚さんはいいの?」の部分が、小池書記局長の「魚が放射性物質によって汚染されているということは、わが党の認識と見解に反する」とした説明と矛盾するからだと考えられる。なぜなら、同日の20時8分に同じ画像を再投稿したが、ポエム部分から魚に関する記述を削除し、「『当事者の理解なしにいかなる処分も行わない』って約束したんよ/お兄ちゃん/約束は守らないとだめだよね」と書き直しているからだ。だがこの書き直しで、およそ子どもが口にしないような政治的発言を小さな子に言わせたような形になり、「政治に子どもを利用するな」など、一層はげしい非難を浴びることになった。
それでも共産党仙台青葉地区委員会は反省せず、同日に別の画像を投稿している。画像には「ALPS処理水 海洋放出に反対します」との表題がついているが、問題なのはその英訳として「Stop Fukushima Water Release Now」との表記が添えられていることだ。
共産党は ALPS処理水を「汚染水」と言い続けているが、それと同時に福島の地名と結び付けて「汚染水=福島の水」と名付けていることになる。
「Fukushima Water」は福島を貶める差別表現である。しかし、これまでに共産党はこの投稿を削除することはなく、なぜ、この表現を用いたのかという説明すらしていない。それどころか、一部の海外報道で同様の表現が用いられていることを示す他者の投稿を引用して、正当化しようとさえしている。
そこまでして共産党は福島を「穢れの土地」にしたいのかと怒りを禁じえないが、これを過去の共産党の態度と比較してみよう。
再投稿された日本共産党仙台青葉地区委員会のポスト
9月8日のポスト
組織的な強い悪意をともなった風評加害
2020年3月12日付けの共産党機関紙「しんぶん赤旗」は、「麻生氏、また差別助長発言」の見出しをつけた記事を掲載した。自民党の麻生太郎副総裁が、新型コロナウイルスについて「『武漢ウイルス』と呼ぶべきだ」と発言したことを非難した記事だ。
同記事は「世界保健機関(WHO)は、特定の地域や民族に対する差別や経済的な悪影響を防止する観点から、感染症の病名に地名を使わない方針を定めています。『武漢ウイルス』発言は差別や風評被害を助長させる恐れがあります」と書いている。
「武漢ウイルス」は差別や風評被害を助長させると言いながら、一方では「Fukushima Water」と福島差別の用語を平然と使い続ける共産党の矛盾した態度には、組織的な強い悪意すら感じてしまう。
〝組織的〟とあえて強調したのは、これらの風評加害発言が、党員個人の考えによるものではなく、共産党が公表している党の政策や志位和夫委員長の公式発言が源泉になっているからだ。
志位委員長を8月22日、ALPS処理水の海洋放出に際して、党の公式見解として、以下の4点に要約される委員長談話を発表している。
①汚染水の海洋放出の決定は、国民・福島県民への約束を投げ捨てるもの。中止を強く求める。
②汚染水はアルプスで処理しても、放射性物質のトリチウムは除去できず、「規制基準以下」とはいえセシウム、ストロンチウムなどの放射性物質も含まれていることを政府も認めており、関係者の同意が得られないのは当然。
③原発建屋内への地下水流入を止めない限り、汚染水は増え続ける。「凍土壁」などが十分な効果をあげていないにもかかわらず、政府は有効な手立てをとっていない。広域の遮水壁の設置など汚染水増加を止める手立てを真剣に講じるべき。
④専門家から「大型タンク貯留案」「モルタル固化処分案」などが提案されている。真剣な検討と対策を行うべき。
以上の4点はいずれも科学とは無縁の一方的な政治的見解に過ぎないのだが、「科学的社会主義」を名乗る共産党の見解はすべて「科学に基づいた政策」と、党員や党議員たちは受け止めている。
①の「約束」の問題にしても、科学によって安全が担保されているのに、その事実を無視すれば、どんな「約束」も成り立つはずもない。話し合いは科学的認識を共有してこそ可能になるが、その科学の認識を妨害しているのが共産党である。
②の党見解は共産党の反科学の態度を如実に示している。「『規制基準以下』とはいえ」という言い方で、トリチウム以外の核種が含まれていることを、ことさら強調し問題視しているが、「基準値以下」なら問題ないとするのが科学的見地だ。
実際、どこの海域の海水にも多くの放射性物質が含まれている。これが高濃度で検出されれば、被ばくを警戒しなければならないが、検出することも難しい「基準値以下」なので、漁をしても海水浴をしても何ら影響されることはない。
「基準値以下」でも問題になるなら、何のための「基準」なのか、共産党員たちは考えてみるがいい。だが、この志位見解をそのまま受けいれて、「汚染魚」「Fukushima Water」など末端の党員・党議員がエスカレートさせているのである。