読者を脅迫するような言いぶりで判断を迫ったり、「俺を信じるか、あいつを信じるか」と踏み絵を踏ませるような物言いが横行する現代社会において、こうした一文を読むだけでも、出版人の良心を感じられるというものだろう。
本欄では情報戦や陰謀論批判などを取り扱った本を何冊もご紹介してきた。良書の刊行が続いているのは、それだけ偽情報やフェイクニュースの蔓延が国際的に問題になっているからで、各国とも対応に頭を悩ませていることの表れでもある。ましてやメディア自身が、偽情報の発信源になってはならない。
全メディア人は本書を漏れなく読むべきだが、リテラシー教育の参考書として日本中のすべての高校の図書館に一冊は備えてほしい。これからますます熾烈を極めるであろう情報戦においても、混迷を極める情報社会を生き抜くにしても、有力な武器であり、防御の要になってくれるはずだ。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。