基地縮小にも反対
とにかく、玉城知事の安全保障感覚は稚拙というしかない。
昨年末、閣議決定された安全保障関連三文書で、南西諸島への防衛力強化方針が示された。
それに対し、知事は「自衛隊の急激な基地機能強化により、沖縄が攻撃目標になるリスクをさらに高める事態を生じさせてはならない」と指摘した。軍事力増強が、沖縄を危険に晒すといっているのだ。
当選一期目の2019年5月、知事は米政府と米軍に対し、海兵隊の撤退を求める書簡を送った。
「米国は海軍と空軍によって中国・北朝鮮問題に対応することができる」と米海兵隊の駐留不要論を訴え、「(海兵隊の飛行場である)普天間の県外、国外移設という賢明な選択をすると信じている」と、上から目線の内容だった。
知事は朝鮮半島有事の際、普天間基地がわが国との事前協議なしに出撃できるだけでなく、核兵器の持ち込みも自由という重要度が極めて高い国連軍指定基地であることをご存じないのだろうか。
一方で、「基地縮小」にも反対している。普天間基地周辺は人口密度が高く、危険な状態にある。そこで2010年、日米両政府は、これを除去するため、同基地を縮小しつつ、本島北部のキャンプシュワブ基地内に移設することで合意した。その際、基地内辺野古沿岸の一部を埋めたてて滑走路を建設することになった。
仲井眞知事(復帰後第7代)は辺野古埋めたてを承認したが、その後、翁長雄志氏(復帰後第8代)が「新基地建設反対」を掲げ、選挙で勝利。翁長知事は、沖縄防衛局から申請された埋めたてに関する変更手続きも一切許可しなかった。
翁長知事のあとを引き継いだ玉城知事(復帰後第9代)も、いまだに「新基地建設反対」と嘯いている。本来なら、普天間の危険が除去され、基地も縮小されるのだから喜ぶべきところにもかかわらず、である。
政府は、防衛省の要求に従って県の処分を取り消したが、県は「地方自治の侵害である」と反発。不承認の効力回復を求めて国を提訴したのだ。
4月26日、第2回口頭弁論が那覇地裁で行われた。
県の代理人を務める仲西孝浩弁護士が陳述。地方自治の独立性について定めた憲法92条を引用し、反論した。
私は、安全保障の面における九十二条の適用は適格性を欠くものと思う。そもそも普天間基地の返還合意は国際条約であり国内法に優先する、しかも日米両政府の合意事項を一地方の首長の意向で破棄できるなどありえない話だ。普天間基地周辺住民の危険除去を求められている緊急性からも、国策が優先されるべきである。
不安しかない「地域外交室」
玉城知事のブレーンといわれているのは、防衛官僚で元内閣官房副長官補の柳澤協二氏だが、本当に政府で働いていたのかと思うほど、反日的な人物だ。
今年2月8日、柳澤氏は「デニー知事と考える沖縄と日本の安全保障」というシンポジウムでこう語った。
「災害派遣とか若い人がたくさんいたほうが良いんだったら、それはスコップを持った部隊が一番良いですよ。不法入国とかそういうのが心配だったら、海上保安庁とか沖縄県警機動隊を呼ぶのが良いんじゃないでしょうか。間違ってもミサイルなんかを置くとね、いざというときに真っ先に攻撃対象になる」
「じゃ、どうするのだというと、少なくともさらに右も左も賛成派、反対派も含めて言えることは、そこが敵基地攻撃の拠点になるような装備をそこに持ってくることには反対ということであれば、もっと幅広い島民のコンセンサスができるんじゃないか」
こんな人物がブレーンについているうちは、知事の反日ぶりはブレーキがかかるどころか加速する一方だろう。
あまり知られていないことだが、実は、沖縄県知事のみ知事としての最優先職務を免除されている。
各都道府県知事は毎年秋口になると、各省庁担当者と交渉し、次年度の予算獲得のため必死になるが、沖縄県のみ内閣府が代行する。また、会計検査の対応についても内閣府から職員が沖縄に派遣され、担当部局職員を直接指南している。
故大田昌秀知事(復帰後第4代)などは時間を持て余し、年末、ファーストクラスを占有、腹心数名を引き連れて海外旅行を楽しんでいた。 知事はよほど時間に余裕があるのだろう、今年度から県庁に「地域外交室」を新設。冒頭の訪中も、その「地域外交」の一環だった。
2月の県議会では「平和構築に貢献する独自の地域外交を展開する」と、その意義を強調して大張り切り。国連の場で辺野古沖埋め立て反対の発信や、中国、台湾など周辺国・地域を訪問して友好関係を構築していくと息巻いた。
知事の安全保障感覚の欠如ぶりは本稿で示したとおりだが、こんな人物に外交を行われては、わが国のガバナンスが問われるばかりか、中国の内政干渉をいま以上に拡大させることになる。
政府は従来の一国二制度的政策を解消し、沖縄を他府県と平等に扱うべきである。これを怠れば、沖縄は台湾よりも先に、中国にみ込まれることになろう。