「養育費受け取り31年40%」目標の内幕
私が長年疑問に思っていたのは、諸外国で採用している制度を輸入することばかりしてきた日本政府が、なぜ、家族法のみ日本独自の制度を創設しようと試みるのか、という点である。この疑問は、当該論文と北朝鮮憲法を見て氷解した。何のことはない、欧米諸国を範にするのではなく、北朝鮮を範にしただけだったのである。
岸田首相が1月4日に発表した「異次元の少子化対策」も、このままだと北朝鮮のこども家庭政策を模倣するだけのものとなるおそれが高い。少子化対策であれば、まず盛り込むべきは、近年急上昇している未婚率を低下させる政策である。なぜなら、婚外子が少ない我が国において、若者が結婚しなければ子どもは生まれないからだ。
また、今や3組に1組の夫婦が離婚する状況であるが、この離婚率を低下させる政策も考えなければならない。なぜなら、ひとり親家庭のままでは、子どもの数は増えないからである。しかし、政府与党から、これらの対策を盛り込むべきとの声は聞こえてこない。むしろ、政府からは、真逆の政策提言がなされている。
4月25日、小倉将信こども政策担当相は、こども家庭庁が進める「離婚前後親支援モデル事業」を拡充し、離婚などによる子どもの養育費に関し、受け取っている母子世帯の割合を、2031年に40%とする政府目標を発表した。なお、小倉大臣が担当するこども家庭庁は、韓国の女性家族部(部は日本の庁に相当)と同様、赤いネットワークの出先機関と揶揄される組織である。
この小倉大臣の提案は、現状の単独親権制度を実質的に維持すること、ひとり親家庭増加に歯止めをかける政策を講じないことを前提としない限り出てこないものである。つまり、エセ共同親権制度の下では、DV などがない場合でも親権を奪われ子どもと会えなくなる親が引き続き大量に発生する。
親権を奪われ、子にまったく会えない親に養育費の支払いだけは強制する制度を作るのはさすがに無理である。単独親権制を温存しようとしたら、養育費支払いの義務化は理論上できないのだ。とはいえ、養育費の支払いを親権を奪われた親にも強要したい。そこで、こんな努力目標を代わりに設定しようと試みているのである。
「子どもの貧困問題解決」は単なるレトリック
法務省が国会提出を予定している民法改正案が、真の共同親権制を導入したものになり、離婚時の養育費の取り決めを義務化する規定となっていれば、改正法が施行された瞬間から、養育費が100%支払われることになる。2031 年に養育費支払いを 40%とする目標などまったく不要である。
小倉大臣の発表した数値目標は、法務省による真の共同親権制導入の前向きな動きを封じようとするものであり、内容面での酷さは言うに及ばず、手続的な面でも酷い。越権行為も甚だしい。斎藤健法務大臣も随分と舐められたものである。
なぜ、法務省が法案を作成すらしていないこのタイミングで、こども家庭庁を乗っ取った赤いネットワークは小倉大臣にこの発表をさせたのか。
それは、法務省法制審議会が答申を出してしまえば、赤いネットワークはその後の法案作成作業に口を出せなくなるからだ。そうすると、自民党の法務部会などが関与し、骨抜きにした答申案とは別の、本物の「共同親権法案」が国会に提出されるおそれがある。それを彼らは阻止しようとしているのである。
北朝鮮の家族法と同様に、子どもを父親に一切会わせなくても養育費だけは必ず強制徴収できる仕組みの実現に邁進する彼らは、今度は、法務省の代わりに、こども家庭庁を利用して離婚後の制度をコントロールしようと仕掛けてきたのだ。
なお、この小倉大臣の発表により、赤いネットワークが常々主張している「子どもの貧困問題解決」が単なるレトリックであることが露呈した。なぜなら、もし彼らが本気で子どもを貧困から救いたいと考えているのであれば、今から8年経過した段階で母子世帯の60%もが養育費を受け取れない状態を目標とするような計画を口にするはずがないからである。