「やくざの集団」「ごろつき」発言で自民県議団がボコボコにされてから、2021年6月の県知事選までは1年半もあった。
当然、「反リニア」川勝知事の有力な対抗馬を用意してくると誰もが考えた。ところが、知事選の2カ月ほど前になって、自民党県議団は参院議員2期目途中の前国土交通副大臣を擁立した。ところが、前副大臣は所属派閥から反対を受け、紆余曲折を経て、ようやく選挙の1カ月前に自民党公認をとりつけた。
選挙戦で、自民党公認候補は川勝知事の「命の水を守る」に恐れをなしたのか、リニア論争から逃げてしまい、その腰抜けぶりはあまりにお粗末だった。
6月20午後8時の開票と同時にメディア各社は川勝知事の当確を打ち、結局、約33万票の大差をつけられる惨敗となった。
このままでは二の舞を演じることになる。
自民党県議団が2025年6月の知事選の準備に入るのにすでに遅いくらいである。ひとつ良いことは、前回と大きく事情が変わっていることだ。
拙著『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太静岡県知事「命の水」の嘘』(飛鳥新社)もよく読まれ、大井川流域市町の首長たちのほとんどが川勝知事の「命の水を守る」の“嘘”に惑わされることはなくなった。
自民党県議団は“特命”事項として、いまから静岡県知事にふさわしい有能な人材を、金のわらじで探すしかない。
静岡市の有権者を対象にした朝日新聞と静岡朝日テレビの出口調査で、川勝知事「不支持」が51%となった。しかし、このままでは、万が一、県議会で「不信任決議案」が採択されたとしても、いい対抗馬がいなければ、川勝知事の再選を許すだろう。日本の未来を背負う重要問題、リニア問題を解決するためにも、自民党はちゃんと役割を果たさなければならない。
「静岡経済新聞」編集長。1954年静岡県生まれ。1978年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。政治部、文化部記者などを経て、2008年退社。現在、久能山東照宮博物館副館長、雑誌『静岡人』編集長。著作に『静岡県で大往生しよう』(静岡新聞社)、『家康、真骨頂、狸おやじのすすめ』(平凡社)などがある。