川勝知事の暴走を止められない静岡県議会|小林一哉

川勝知事の暴走を止められない静岡県議会|小林一哉

川勝理事の「命の水」を熱狂的に支持してきた共産党が、先の静岡県議選で県議会から消えた。しかし、まだ川勝知事の暴走を止めるにはいたらない。静岡県議会が弱体化している理由。


川勝県政は安泰に

自民党県議団をボコボコにした川勝知事の会見(静岡県庁、筆者撮影)

静岡県議会臨時会が2023年5月19日開かれ、新たな正副議長の下、常任委員会などの所属が決まり、新たな県議会がスタートする。

4月9日投開票の県議選で、最も注目を集めたのが、川勝平太・静岡県知事を支える第2会派「ふじのくに県民クラブ」の議席数だった。

今回、選挙前の17より1つ増えて18議席となった。この結果、今後2年間、よほどのことがない限り、川勝県政は安泰とみていい。つまり、県議会は川勝知事の暴走を止められないのだ。

2021年10月の参院静岡選挙区補欠選挙の応援演説で、川勝知事は、元・御殿場市長の自民党公認候補を揶揄して、「御殿場にはコシヒカリしかない」などと発言した。この発言が報道されると、御殿場市民はじめ県民の怒りを買い、御殿場市民を傷付けたとして、静岡県議会が問題にした。

「御殿場コシヒカリ」問題で、自民党県議団は、川勝知事の議会解散あるいは自身の失職かの選択を迫られる「不信任決議案」提出を目指した。

自民に加え、公明党県議団、一部無所属議員の計48人が賛同したが、ふじのくに県民クラブの壁を切り崩すことができず、68議席のうち、可決要件の4分の3、51人の賛成票を集めることができなかった。

大山鳴動したが、県議会は「辞職勧告決議案」を賛成多数で可決して終わった。決議に法的拘束力は一切なく、川勝知事は「陳謝して、反省する」と述べただけだった。
 
ただ「不信任決議案」が可決されても、自民党県議団は川勝知事に対抗する有力な候補を立てることはできなかっただろう。つまり、「不信任決議案」を目指したのも単なるパフォーマンスだった可能性がある。
 
新たな県議会で「不信任決議案」提出の事態になったとしても、ふじのくに県民クラブ18人、前回、反対に回った無所属議員1人の19人が反対票に回るはずである。「不信任決議案」成立の可能性は限りなく小さい。

県議会から消えた共産党

静岡県議選ポスター。共産党県議候補はあえなく落選した(静岡市内、筆者撮影)

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