一方、中国が直接的な戦闘よりも隠密、欺瞞、奇襲の手段で目的を達成しようとしてきたのには、軍事的な理由がある。例えば南シナ海での勢力拡張は、1発の弾丸も発射せずに行われた。全志願制のインド軍と対照的に、中国の人民解放軍(PLA)は18歳になって2年間の軍務に表向きは「志願」した徴募兵に多くを依存している。インドは山岳地帯でのハイブリッド戦の経験が世界一豊富で、米国での二つの研究によると、世間一般の見方とは逆に、標高の高いヒマラヤの環境ではインドが中国よりも優位に立つ。
インドの信じられないほどの経済成長は、インドを世界経済の重要な柱の一つにした。しかし、21世紀をインドの世紀にするには、インドは比較的安価な労働コストと、生産場所の中国からの緩やかな移転を図る西側企業の取り組みをうまく利用して、製造業の一大拠点とならなければならない。インドの加速する台頭は、中国拡張主義を制御するのに役立つ。(2023.04.24 国家基本問題研究所「今週の直言」)
インド政策研究センター教授。専門は戦略研究。著書にAsian Juggernaut: The Rise of China, India and Japan (Harper Collins, 2006)、Water: Asia’s New Battleground (Georgetown University Press, 2011) など。