【読書亡羊】権力と官僚の「幸せ」な関係とは 兼原信克、佐々木豊成、曽我豪、高見澤將林著『官邸官僚が本音で語る権力の使い方』

【読書亡羊】権力と官僚の「幸せ」な関係とは 兼原信克、佐々木豊成、曽我豪、高見澤將林著『官邸官僚が本音で語る権力の使い方』

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


危機意識が低い政治家と世論

もちろん官僚については各省が省益ばかりを考えて横の連携が全くない縦割りの問題も、いまなおある。しかし「いざという時に機能しない組織」が存在する本当の理由は、官僚自身の問題もさることながら、政治の舵取りや組織のあり方、さらには世論から生じている面もある。

例えば危機管理の問題。官僚ではない立場で本書に参加している朝日新聞の曽我氏が言うように、自民党はもちろん野党の代表選で「この人が将来有事の際にどれくらい能力があるか」という観点で報道がなされるかといえば心もとないし、国民も関心を持たない。

「実のところ、普通の政治家は有事で自衛隊員が死ぬなんて思っていない」と兼原氏が言えば、防衛官僚の高見澤氏は「防衛大臣や外務大臣をやった政治家の中にも、『俺はそういう話は怖いから聞かない』なんて言う人がいます」、とサラリと恐ろしいことを指摘する。

身内に自衛官がいるものとしては聞き捨てならないが、実際、「自分の決断の誤り一つで、自衛官、あるいは国民が命を落とす」とのリアリティをもって政務に取り組んでいる政治家の方が少ないのだろう。無論、それは政治家だけでなく、官僚、メディア、ひいては国民も同罪かもしれない。

その中で、曽我氏が次のように述べているのは注目したいところだ。

Getty logo

我々新聞記者が法律論を展開する時って、どうしても「歯止め」だったり「権力の暴走を止める」ほうから立論していくんです……もちろん権力の暴走を監視し歯止めをかけるうえでは必須の議論ですが、それだけだと現実的な安全保障議論はなかなか前に進みません。

全く同感なのだが、こうした指摘に同意する新聞記者がどの程度いるのか、不安に思うのも確かだ。

関連する投稿


【読書亡羊】「道産子アメリカ人」が静かに鳴らす警鐘が聞こえるか  ジョシュア・W・ウォーカー『同盟の転機』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】「道産子アメリカ人」が静かに鳴らす警鐘が聞こえるか ジョシュア・W・ウォーカー『同盟の転機』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【読書亡羊】ベネズエラ国民「私たちを見捨てないで!」 トランプがマドゥロ拘束に動くまで  外山尚之『ポピュリズム大国 南米』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ベネズエラ国民「私たちを見捨てないで!」 トランプがマドゥロ拘束に動くまで 外山尚之『ポピュリズム大国 南米』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【読書亡羊】「麻辣強国」VS「マサラ強国」…米中印G3時代への準備はいいか  中川コージ『インドビジネスの表と裏』(ウェッジ)|梶原麻衣子

【読書亡羊】「麻辣強国」VS「マサラ強国」…米中印G3時代への準備はいいか 中川コージ『インドビジネスの表と裏』(ウェッジ)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【読書亡羊】熊はこうして住宅地にやってくる!  佐々木洋『新・都市動物たちの事件簿』(時事通信社)|梶原麻衣子

【読書亡羊】熊はこうして住宅地にやってくる! 佐々木洋『新・都市動物たちの事件簿』(時事通信社)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【読書亡羊】韓国社会「連帯」と「分断」の背景に横たわる徴兵制の現実とは  金柄徹『韓国の若者と徴兵制』(慶應義塾大学出版会)|梶原麻衣子

【読書亡羊】韓国社会「連帯」と「分断」の背景に横たわる徴兵制の現実とは 金柄徹『韓国の若者と徴兵制』(慶應義塾大学出版会)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


最新の投稿


トランプのマドゥロ拘束 国際法では悪を倒せない|黒井文太郎【2026年3月号】

トランプのマドゥロ拘束 国際法では悪を倒せない|黒井文太郎【2026年3月号】

月刊Hanada2026年3月号に掲載の『トランプのマドゥロ拘束 国際法では悪を倒せない|黒井文太郎【2026年3月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


ロ・中・イラン・北朝鮮 悪の枢軸四カ国大混乱|長谷川幸洋【2026年3月号】

ロ・中・イラン・北朝鮮 悪の枢軸四カ国大混乱|長谷川幸洋【2026年3月号】

月刊Hanada2026年3月号に掲載の『ロ・中・イラン・北朝鮮 悪の枢軸四カ国大混乱|長谷川幸洋【2026年3月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【消偽求実 第二号 第二部】トランプのベネズエラ爆撃により梯子を外された高市外交|遠藤誉【2026年3月号】

【消偽求実 第二号 第二部】トランプのベネズエラ爆撃により梯子を外された高市外交|遠藤誉【2026年3月号】

月刊Hanada2026年3月号に掲載の『【消偽求実 第二号 第二部】トランプのベネズエラ爆撃により梯子を外された高市外交|遠藤誉【2026年3月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】恐怖を煽る子どもだましの番組|藤原かずえ

【今週のサンモニ】恐怖を煽る子どもだましの番組|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


自民党よ裏切るなかれ|小川榮太郎【2026年3月号】

自民党よ裏切るなかれ|小川榮太郎【2026年3月号】

月刊Hanada2026年3月号に掲載の『自民党よ裏切るなかれ|小川榮太郎【2026年3月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。