【読書亡羊】権力と官僚の「幸せ」な関係とは 兼原信克、佐々木豊成、曽我豪、高見澤將林著『官邸官僚が本音で語る権力の使い方』

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


内閣人事局は「合理的」

元外務官僚で外政担当の内閣官房副長官補を務めた兼原氏が言うように、自ら方向を示し決断する「将軍型リーダーだった」安倍総理でも、「私一人では何の成果も生み出せない」のが政治の世界。さらに官僚の側も、実は強い官邸を望んでいるという。

元財務官僚で内政担当の内閣官房副長官補を務めた佐々木氏は「政治家に方向を決めてもらった上で、役所全体が同じ方向に向かうというのは、役人にとってはすごく快感だと思います」と述べたうえで、安倍政権時代、経済再生担当大臣を務めた甘利明前自民党幹事長の例を挙げる。

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経済再生担当大臣だった甘利明さんは、内閣官房の幹部が何人かで出向いた時に、「俺は役人を使いまくる」と言いました。「お前らを徹底的に使うぞ」と言われて、役人はその言葉に奮い立ったんです……政治家と役人は役割が違っていて、政治家が役人をうまく使い、役人が政治家にうまく使われると、チームとしての能力が発揮されます。

内閣人事局ができて、人事を握られたから官僚は政治家を忖度せざるを得なくなった、とする巷間の指摘にも佐々木氏は「前から官邸は官僚人事検討会議をやっていたし、人事局で官邸の力が強まったかは正直よくわからない」と疑念を呈す。

さらに元防衛官僚で安全保障・危機管理担当の内閣官房副長官補を務めた高見澤氏も内閣人事局ができたことで「官邸の力が強くなったという実感はあまりない」と述べる。

内閣人事局の意義は年次を重んじるなどの伝統的な人事管理を変えたことにあり、官邸の判断で適材適所を徹底するのは合理的なシステムだと評価しているのだ。

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