“習近平帝国”中国でSNS「実名告発」が急増のワケ|宮崎紀秀

“習近平帝国”中国でSNS「実名告発」が急増のワケ|宮崎紀秀

中国で、自らの本名を明かし、職場の上司から受けた性暴力などを告発する女性が相次いでいる。なかには、妻が夫の不倫や不正行為を暴露するケースもある。なぜ、女性たちは実名や素顔を晒してまで告発に走るのか。そこからは現代の中国社会が抱える病理が垣間見えた。


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国有企業の職員を告発したが

戴さんに先立ち、同年2月に注目を集めた告発者は、豊かな黒髪と透けるような白い肌が印象的な若い女性だった。身分証を掲げて動画での実名告発という大胆な行動にもかかわらず、細い肩のラインと不安げに揺れる大きな瞳は、儚(はかな)げな印象を与えた。  

その宛晶晶さんが告発したのはかつての恋人、王興利。当時、王は高速道路や鉄道の建設を担う国有企業の職員。23歳の宛さんより20歳あまり年上で、妻帯者であることを隠していた。  

訴えによれば、宛さんは王と1年半にわたり同棲。まだあどけなさが残る宛さんだが、その間、二度妊娠し中絶したという。精神的に追い込まれ、うつ病になるほどのモラハラも受けていた。  

宛さんは、王が乱れた私生活を送り、自分以外にも多数の女性と関係を持っていたとぶちまけたが、告発したのはそれだけではなかった。  

王が、賄賂の授受や人身事故についての偽の報告、巨額の公費の利息の着服などに関与していたと暴露したのだ。王のパソコンから証拠資料もコピーしてあるという。  

宛さんは、過去にも王の会社の規律や監査の担当部門に通報していた。だが、王に処分らしい処分は下されなかった。彼女がSNS上での実名告発に踏み切ったのは、その苛立ちからだった。  

実名告発から一週間あまり経った時、宛さんはSNS上に自殺を仄めかす文章を載せた。中国メディアによれば、その後、彼女は実際に自殺を試みたが、それを察知したネット民らの機転に助けられ、未遂に終わったという。  

彼女はその文章のなかで、告発の目的は金目当てだとか、愛人だから当然、などのネット上の中傷に心を痛めていたことも明かしていた。

「告発のために立ち上がった時は、正義の光という希望を見たと思ったけど、結局何も変えられないことが分かった」

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身を結んだ告発

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