日本の場合、警察権の行使しかできない海上保安庁では、武力行使が可能な海警に歯が立たない。同時に、数に任せた海上民兵の行動にはお手上げである。これだけみても日本は海上におけるグレーゾーン事態では戦わずして負けている。
台湾有事は日本有事であり、これに備えなければならないのは言うまでもない。だが、備えるべきは「見える有事」だけではない。認知戦、影響力工作、そしてグレーゾーン事態など、「静かなる有事」は既に始まっている。これを認識し、適切に対応することが喫緊の課題である。(2022.12.05国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
麗澤大学特別教授、元空将。1974年、防衛大学校卒業、航空自衛隊入隊、F4戦闘機パイロットを経て、83年、米空軍大学留学、90年、第三〇一飛行隊長、92年、スタンフォード大学客員研究員、九九年、第六航空団司令などを経て、2005年空将。06年、航空支援集団司令官(兼ねてイラク派遣航空部隊指揮官)、09年、航空自衛隊退官。その後、東洋学園大学客員教授、国家戦略研究所所長などを経て、現職。