【読書亡羊】「500円の節約」と「500億円の節税」が共存する日本経済の現状 小林美希『年収443万円』(講談社現代新書)、大森健史『日本のシン富裕層』(朝日新書)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


「自分にとって得」なことしか考えなくなった日本人

こうした落差のある状況はなぜ生まれたのか。『年収433万円』の小林氏は、小泉構造改革以降の日本の経済・労働政策の問題点を指摘しつつ、「格差是正法」の制定を提案する。

さらに小林氏はこう述べる。

多くの人が〝割安〟で〝自分にとって得〟なものを求めている。人間のものさしが、短いものしか計ることができなくなっている。社会全体のことを考えなければ、不利益が予想以上に大きくなって自分に返ってくる。

日本のシン富裕層 なぜ彼らは一代で巨万の富を築けたのか

これには全く同感だ。

『日本のシン富裕層』に〈(シン富裕層は)海外志向でも日本は好き〉という節があるが、寿司を食べたい時や病気になった時に帰りたい場所としての「日本」としてしか紹介されていない。これではもはや外国人観光客目線だ。もちろんシン裕福層がすべてそうとは限らないが、日本という国、社会に対する責任感がまるでないように見受けられる。

実際、何らかの規制を設け、儲けている人たちから搾り取ろうとしても、彼らは〝自分にとっての得〟を求めて軽々と日本からドバイへと飛び立っていく。だが、富裕層が次々と海外へ飛び立てば、「彼らが帰りたい時に(うまい寿司や充実した医療のある)祖国は失われていた」ということにもなりかねない。

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