ロシアの「成功体験」が招いた今般の失態
『米露諜報秘録』はウクライナ侵攻より前の2020年までの記述にとどまっている。本書執筆時点では、ロシア・プーチンの情報戦がアメリカを席巻し、民主主義への信頼を破壊し、ロシアがアメリカに一矢報い、甚大な被害をもたらしたというのが「最新状況」だった。
だが、それから2年、ロシアによるウクライナ侵攻を知る現在の私たちから見ると、執筆時点とはまた違った読み味が生まれてくる。
例えば、ジョージア、ウクライナで発生したカラー革命。
プーチンにとって、それは、民主主義の支援に見せかけた、アメリカの情報機関がソ連に対して実行する一連の転覆と妨害工作の一部だった。
この二つの革命が、プーチンに与えた対米認識は、今般のウクライナ侵攻にも大きな影響を与えたに違いない。
そして2014年のクリミア侵攻。現地の民兵を装った特殊部隊に現地住民を殺害させる一方、通信回路を切断し、国際世論をも操った。結果、ロシアはクリミアを手にしたが、国際的非難はそれほど大きなものではなかった。日本からは鳩山元総理が、クリミアを訪れ「ロシアによる併合を支持する。対ロ制裁を解除すべき」と述べたほどだった。
だが、ロシアによるウクライナ侵攻の現状を目の当たりにしている2022年の視点からは、ロシアがこの時、あまりに鮮やかに目的を達成した「成功体験」が、かえって今回のウクライナ侵攻を躓かせたのではないかという思いにもかられる。
日本政府が「影響が大きい」と懸念していた鳩山由紀夫元首相のクリミア半島訪問は、大方の予想どおり、ロシア側がクリミアの一方的な併合を正当化する材料にされる結果に終わったようだ。ロシアメディアによると、鳩山氏は現地でクリミア併合を支持する発言を連発。日本は対ロ制裁を解除すべきだとした上で、ロシアに批判的な国際社会や日本メディアの論調を「洗脳されている」「恥ずかしい」などと主張した。日本側は、「あんまり