【読書亡羊】工作員の手を離れた「情報戦」がアメリカ社会を破壊する ティム・ワイナー『米露諜報秘録』(白水社)、藤原学思『Qを追う―陰謀論集団の正体』(朝日新聞出版)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


工作員以上に自国の破壊に加担する「愛国者」たち

ロシアは、かねて「対米プロパガンダを広げるための最大の装置であり、脅威」とみなし敵視してきたインターネットを利用して、アメリカ社会の分断を深める道具に仕立てあげた。

もともと存在していた分断を刺激されたアメリカ社会は、リベラルと保守がこれまで以上に敵視し合うようになり、アメリカ国民自身が「アメリカのために」との思いで、デマや陰謀論を拡散させていく。

「情報」はロシアのネット工作員の手を離れ、アメリカの一般人たちが自らの認知と社会を破壊に追い込んでいく事態に至っている。工作員の手を離れた情報戦の影響とその行方は、もはや誰にもコントロールできない事態に至りつつあるのではないか。そしてそれは、日本にとっても他人事ではない。

『米露諜報秘録』と『Qを追う』は、その意味で合わせて読むべき2冊と言えるのだ。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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