工作員以上に自国の破壊に加担する「愛国者」たち
ロシアは、かねて「対米プロパガンダを広げるための最大の装置であり、脅威」とみなし敵視してきたインターネットを利用して、アメリカ社会の分断を深める道具に仕立てあげた。
もともと存在していた分断を刺激されたアメリカ社会は、リベラルと保守がこれまで以上に敵視し合うようになり、アメリカ国民自身が「アメリカのために」との思いで、デマや陰謀論を拡散させていく。
「情報」はロシアのネット工作員の手を離れ、アメリカの一般人たちが自らの認知と社会を破壊に追い込んでいく事態に至っている。工作員の手を離れた情報戦の影響とその行方は、もはや誰にもコントロールできない事態に至りつつあるのではないか。そしてそれは、日本にとっても他人事ではない。
『米露諜報秘録』と『Qを追う』は、その意味で合わせて読むべき2冊と言えるのだ。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。