「ケツ舐め記者」と誹謗する金平茂紀の正体|山口敬之【WEB連載第17回】

「ケツ舐め記者」と誹謗する金平茂紀の正体|山口敬之【WEB連載第17回】

9月17日、金平茂紀氏はFacebookにこう投稿した。《この国にも「ケツ舐め記者」という連中が少なからず棲息していて、権力者、独裁者、ご主人様の局所を舐めて、その対価として「ご褒美」をもらって、それを得意げに広報し、「独自」「スクープ」とかのワッペンを自分で貼りつけて(中略)男性にも女性にも、もちろんいます、「ケツ舐め記者」は》。金平氏は、一体何様のつもりなのか。


営業局長や制作局長のように収益や視聴率といった客観的な指標が明確なセクションのトップと違って、報道局長の社内評価は部下である記者たちの「スクープの質と量」によって大きく左右される。

だから金平は自分が報道局長をやっていた時は、所属する全ての記者に対して「情報ソースに食い込んで」「独自情報をスクープする」ことを大いに称揚していたのだ。

その証拠に、金平名で私に出された表彰状では、自分の出世にかかわる「スクープ」という単語が頻出する。

︎■2006年1月31日
【極秘日朝協議のスクープ】
「あなたは、外務省の斎木審議官が極秘に出国し、中国・瀋陽で北朝鮮のソン・イルホと会談していたことを報じました。日朝交渉を軌道に乗せるための舞台づくりという重要な会談のスクープとなりました」

■2006年5月23日
【「横田めぐみさんの夫はキム・ヨンナム氏」のスクープ】
「横田めぐみさんの夫が韓国人拉致被害者ではないかという観測が広がり国際的な取材合戦が繰り広げられる中、日本政府が極秘裏に行ったDNA鑑定の結果をいち早く入手し、めぐみさんの夫をキム・ヨンナム氏と判断した政府の見解を、他社を圧倒する速さで速報しました。さらに、直後のニュースでもその詳細を報じ、TBSテレビ報道の声価を大いに高めました。よってここに報奨します」

■2007年6月19日
【「日米首脳会談の内幕報道」のスクープ】
「あなたは(中略)アメリカが拉致問題を切り離して(北朝鮮への)制裁を解除する方針であることをスクープしました。更に、ブッシュ大統領が『安倍首相の困ることはしない』と日本に配慮して見せる発言をしていたことなど、首脳間の具体的なやり取りも報じました。外交の深淵に迫るこれらの報道は、他メディアも追随し大きな反響を呼びました」

私はTBS報道局在籍中幾度となく表彰され、その時々の報道局長による表彰状の文面をたくさん読む機会があった。

しかし金平が報道局長を務めていた3年間の表彰状は一種独特だったのをよく覚えている。それは金平個人の出世欲を色濃く映した、極めて内向きの文面だったからだ。

例えば記者である私は、政府や行政が隠しがちな真実を国民に伝えるために仕事をしているのであって、「TBS の取材力を大いに知らしめました」「TBS報道の声価を大いに高めました」などと褒められても、「そんなことのために睡眠時間を削って取材しているわけじゃない」と強い違和感があった。

そして金平の「外交の深淵に迫る」などという歯の浮くような表現も、「自分が質の高い報道を生み出す、いかに素晴らしい報道局長であるか」を会社の上司にアピールする意図で書かれているような気がしてならなかった。

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