安倍元首相の死を、「国内騒擾」に使われないために今できること ジョン・ウィッティントン著、定木大介訳『暗殺から読む世界史』(東京堂出版)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!(今回はちょっと遅刻しました)


「ケネディ暗殺」からわれわれが学べること

ケネディの項は〈マスメディアが注視する中で行われた史上初の凶行〉という見出しで始まり、こう書かれている。

(事件が起きた)1963年11月22日以降、何年もの間、「ケネディ大統領が撃たれたのを知った時、どこにいた?」というのは、よく耳にするありふれた質問だった。そして、訊かれた方はほぼ全員、その質問に答えることができたのである。

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ケネディ、暗殺の瞬間。

こうしたやり取りからは、近い将来の我々を見るようだ。それだけではない。詳しくは本書をお読みいただきたいが、シークレットサービス(要人警護担当者)の不備などを始め、ケネディ暗殺についての事件情報に、今回の事件との類似点を見出す人もいるのではないかと思う。

だからこそ気を付けなければならないのは、憶測に憶測を重ねた陰謀論の発生と発展だろう。ケネディ暗殺事件の陰謀論は、50年以上たった今も絶え間なく語り継がれ、新たな要素を加えながら日々「進化・深化」してしまっている。

ケネディ暗殺に関する機密文書は数百もあるというが、その公開を〈国家安全保障上「不可逆的な害を及ぼす可能性がある」という理由で、トランプ大統領が‐―ぎりぎりになってから――見送った〉ことも、陰謀論の「進化・深化」を後押ししている。

これまた、我々は「我が身を振り返らなければならない」だろう。すでにさまざまな、無関係な点と点を勝手に線で結び、「事件の真相」に迫ろうという「解説」が、ネットを中心に飛び交っている。

そうした人々はおそらく安倍総理のため、あるいは国のため、市民のためにやっている「つもり」なのだろうが、実際には人々の認知を撹乱するだけの結果しか生まない。

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