上海電力が参入したからくり
その後、咲洲メガソーラーは、2012年末の発表事の発電開始予定時期(2013年夏)を過ぎても工事すら始まらなかった。
2014年3月18日、伸和工業は「『合同会社咲洲メガソーラー』が大阪市のメガソーラー事業を受注した」と発表した。そのおよそ1か月後の2014年4月「上海電力日本株式会社」が「合同会社咲洲メガソーラー」に加入(出資)する形で事業に参入した。
この時、大阪市長を務めていた橋下徹氏は、「大阪市の発電事業に中国政府の支配下にある上海電力を参入させる」という極めて重要な変更について、市民に一切の説明をしていない。2012年12月には「日本企業2社が受注した」と発表しているのだから、内容に変更があれば市民に発表し説明するべきだ。
特に、インフラの根幹である発電事業に外国企業を参入させるのだから、大阪市民のみならず日本国民にきちんと説明して、決定前にその是非を問うというのが、真っ当な市長のやり方だ。しかし橋下市長は一切説明しないどころか、「外国企業を参入させるという判断をした」という簡単な発表すらしなかった。
もし、橋下市長の知らない所で、上海電力が大阪市のメガソーラー事業に参入していたのであればそれはそれで大問題だ。もしそうなら、橋下氏はいつ上海電力の参入を知ったのか。そして知った段階で市長としてどういうアクションをしたのかが厳しく問われるべきだ。
いずれにしても、大阪市が市民や市議会に説明も発表もしないまま、上海電力の咲洲メガソーラー参入が決められことは間違いない。この騙し討ちのような外国企業のメガソーラー参画の経緯を、私は「ステルス参入」と呼んでいる。
中国企業と「国防動員法」
咲洲メガソーラーは、上海電力の日本の公共発電事業の受注第1号となった。
これ以降、上海電力は大阪市での事業実績を武器に、急速に事業を拡大、兵庫県三田市、茨城県つくば市、栃木県那須烏山で巨大なメガソーラー発電設備を完成させた。そして、上海電力は今では日本各地で巨大メガソーラー事業を展開している。全てのスタートが、大阪市のステルス参入だったのだ。
中国には2010年に成立した国防動員法という法律がある。
・中国政府が「有事」と認定すると、全国人民代表大会(全人代)常務委員会の決定の下国防動員令が発令される
・国防義務の対象者は、18歳から60歳の男性と18歳から55歳の女性
・国務院、中央軍事委員会が動員工作を指導する
・個人や組織が持つ物資や生産設備は必要に応じて徴用される
・有事の際は、交通、金融、マスコミ、医療機関は必要に応じて政府や軍が管理する。また、中国国 内に進出している外資系企業もその対象となる
・国防の義務を履行せず、また拒否する者は、罰金または、刑事責任に問われることもある
国防動員法は2021年10月の全人代で、「国防に関する動員の決定や変更について法的手続きを不要にする」と改められ、さらに柔軟な運用が可能になった。国防動員法は中国国外に住む中国人や中国企業にも適用される。
ということは、中国企業に発電事業を任せていたら、中国政府が「有事」と決めるだけで、日本社会を混乱させダメージを与える目的で、発電を止めたり、異常な電流を流して送電網を壊滅させるなど、破壊工作をする可能性が否定できない。
私は、こうしたリスクを避けるため、電力、ガス、水道などのインフラ事業には外資規制をかけるなど日本国と日本人を守るための立法措置を早急にとるべきだと考えている。そして、規制する法律がないからといって、市民に何の説明もないまま中国企業に発電を任せた橋下市長のやり方は、極めて不適切・不誠実だ。
当時の大阪市議会では、野党側から「なぜ騙し討ちのような手法で上海電力の日本参入を手引きしたのか」などという質問が出なかったのだろうか。
大阪の大手メディアも、なぜ橋下市長を追求しなかったのだろうか。
調べれば調べるほど、咲洲メガソーラーの謎は深まっていく。