平成18年10月15日、当時の中川昭一自民党政調会長がテレビ番組で「核議論を尽くすべきだ」と発言し、国内外で大きな反響を呼んだ。中川氏はその本意を後日、週刊誌においてこう述べている。
「そもそも、私は核保有議論はしていません。核の議論をしましょうと言ったのです。もっと言えば、核の抑止力の議論を提言したいと言ったのです。それは、拉致も含めて日本の平和と安全に関する抑止力です。議論を封じ込めること自体が、おかしいんですよ」。
あれから15年以上たった2月27日、安倍晋三元首相はテレビ番組で「非核三原則はあるが、議論をタブー視してはならない。NATO(北大西洋条約機構)でドイツなども『核シェアリング』をしている。国民の命をどうすれば守れるかは、さまざまな選択肢をしっかりと視野に入れながら議論すべきだ」と述べた。
全くその通りである。中川、安倍両氏ともに、核を持てとも、ましてやつくれとも発言していない。「核を議論すべきだ」と主張している。
台湾有事であり得る中国の恫喝
ロシアのウクライナ侵略が今も続いている。外交努力も経済制裁の警告も、そして米国やウクライナの巧みな情報戦も、戦争を抑止できなかった。「力を押し返すことができるのは、最後は自国の力」という現実を我々は改めて見つめる必要がある。その力とは通常戦力のみならず、核の力も含む。核大国のロシアが、核を持たない隣国に核の使用をほのめかし、恫喝(どうかつ)しているが、今、国際社会はこれを止めることができない。
片や中国は、2030年には核弾頭約1000発を保有して、米国と対峙する核大国になると指摘されている。独善的な価値観を押しつけ、力による現状変更を厭(いと)わない中国が、核大国として米国の力を抑制しつつ、覇権拡大のため核の使用をほのめかすことは容易に想像できる。台湾および日本は、中国の覇権拡大を邪魔している第一列島線上に位置する。プーチン・ロシア大統領と同様、習近平中国国家主席が誤算と過信に陥り、台湾に攻め込んだ際、台湾防衛に参戦した米軍を支援する日本に対し核の恫喝を行ってきたら、日本はどう対応するのか。