住宅平均価格は年収の59倍
すると、「住宅がそれほど余っているのに、依然としてなぜ不動産投資が伸びているのか」という疑問が生じる。だがその理由は簡単で、この二十数年間、富裕層はもちろん、一般の公務員やサラリーマン皆が、自分の住む家以外に、持ち家や分譲住宅を2軒、3軒と投資や投機目的で買ってきたからである。
実際、中国にいる筆者の親戚や友人たちも皆そうしている。いまの中国では、不動産の2軒、3軒を保有していない人は「人にあらず」という雰囲気すらある。 すなわち、中国の不動産市場は完全に、実際の需要とは無関係の投資や投機市場となっているのだ。
一方、投資や投機が盛んになっていることで、不動産価格は継続的に上昇する。投資・投機的な購買は、不動産価格を上昇させる大きな原動力となっている。その結果、中国の不動産価格はすでに凄まじいほど高騰している。たとえば、住宅平均価格が年収の何倍かを示す数値を見ると、東京やニューヨークは9~14倍であるのに対し、上海のそれは59倍、深センや北京でも50倍を超えている(金融シンクタンク「如是金融研究院」)。
「年収の50倍」は、日本のサラリーマンの感覚からすればおよそ数億円の大金になろうが、上海では一般人が普通の住宅をこのような異常な価格で買わざるを得ないのである。
投資と投機によって不動産価格がそれほどまでに高騰している状況は、不動産バブル以外の何ものでもない。いまの中国の不動産バブルの規模と「バブル度」は、1980年代の日本とリーマンショック以前のアメリカのそれをはるかに超えている。史上最大の不動産バブルが、いま中国で膨らんでいる真っ只中なのだ。
GDPの約半分に相当する額の借金
こうした中国の異常な不動産バブルは、金融機関からの借金で成り立っている面がある。2021年6月末時点で、中国の各金融機関が不動産向けに行った融資残高は50兆7800億元(約873兆円)に達しており、過去10年間で約5倍、中国のGDPの約半分に相当する規模にまで膨らんでいる。「中国の不動産バブルは金融バブルの上に成り立っている」ことに対して、中国の金融行政は大変な危機感を抱いている。過去の日本の事例からも明らかなように、金融機関からの融資を頼りにした不動産バブルが一旦崩壊すれば、金融機関と金融業全体が多大な打撃を被る。