【『中国、13の嘘』】林芳正外相問題の深刻さ|古森義久

【『中国、13の嘘』】林芳正外相問題の深刻さ|古森義久

「日中友好、新型コロナ、ウイグル・ジェノサイド否定、パンダ親善大使、核先制不使用……国家ぐるみの虚偽(フェイク)が白日の下にさらされる」――産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏だからこそ書けた秘密主義国家が最も隠したい真相情報と米中対立の内幕『中国、13の嘘』が発売中! 今回は本書から一部特別公開!


中国側に議員はいない

だが中国との交流はとくに「友好」という言葉を正式名称に入れて、強調する。日本と中国はそもそも友好的な関係にあらねばならないという前提を誇示するわけだ。

日中友好議員連盟が他の議員連盟と異なる、さらに大きな特徴は、中国側には議員が存在しない点である。

この連盟への参加者は日本側ではもちろん、一般国民の自由な選挙で選ばれた超党派の国会議員である。だが国民の自由な選挙による議会が存在しない中国側では、そんな議員はいないのだ。

この連盟での中国側の「議員」は全国人民代表大会(略称・全人代)の代表だとされる。

だがその代表は共産党の独裁支配の中国では日本のような一般国民の選挙では選ばれず、共産党の指名や推薦に限られる。国民が選ぶ議員ではないのだ。

日本の主要メディアは全人代を評して「日本の国会に相当する」などという表現を頻繁に使う。だが全人代は国会ではない。立法府であるふつうの国会ならば法案を審議して、可決もするし、否決もする。

だが中国の全人代では審議される法案が否決されることはない。絶対の権限を持つ共産党政権の意思に全人代が逆らうことはないからだ。

日米同盟関係を堅固措置はすべて中国敵視政策

孔鉉佑大使と中友好団体責任者とのビデオ階段

中国政府は日本との折衝で、日中友好議員連盟をきわめて重視してきた。日本側への中国の政策や要求などの売りこみには、いつもまず同議員連盟を始めとする中日友好七団体を最初の伝達相手としてきた。

日本の議員の側も、ここ2年ほどはコロナウイルス大感染や日中関係の悪化のために中国への友好的なアプローチは目立たなくなったが、かつては北京詣でが花盛りだった。その主体は日中友好議員連盟だった。
(中略)

北京にくる日本の国会議員たちはみな中国側の要人と会い、中国側の日本や日中関係についての主張に耳を傾け、その骨子を北京駐在の日本人特派員たちに発表する。

そのころ中国は江沢民国家主席の下で日本側に対して「過去への反省が足りない」と非難していた。「日本では軍国主義が復活しつつある」などという批判もあった。中国の国内では日本について戦後の対中友好政策をまったく教えず、戦時中の日本軍の残虐行為だけを教える反日教育が徹底していた。

中国政府はまた日本がアメリカとの同盟関係を堅固にする措置はすべて中国敵視政策だとして糾弾していた。

だが北京を訪れる日中友好議員連盟の議員たちからは、中国側のそんな不当な日本非難を批判したり、反論する人物は出てこなかった。とにかく中国側の主張をただただ拝聴するという「対中友好」だったのだ。

中国側はその後、現在にいたるまで日中友好議員連盟などの友好7団体を異様なほど丁重に扱ってきた。中国の首脳の訪日でもこれら友好団体の代表を特別に優先して招き、会見し、懇談するという慣行を保ってきた。

日本の中国大使館でも年頭の挨拶や特別な記念日には必ずこれら友好団体の代表を招待して、中国大使との友好的な交流を進めてきた。中国側のこの姿勢はいまも変わらない。

中国政府が対日工作では日本側の日中友好議員連盟を筆頭とする7団体をいかに重視し、依存するか。2021年1月にも日本駐在の孔鉉佑駐日大使が、林芳正議員をはじめ友好七団体の代表を招き、ビデオ会議を開いた。東京の中国大使館は大使が日本側の友好団体を呼びつけるように、連帯の会議を長年、定期的に開いてきた。

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