今のところ、軍事的な米中間の摩擦はあくまでも「お互いに抑止をかけあっている」状態であり、双方とも「軍事的衝突を望んでいるわけではない」と解説される。「戦わずして勝つ」という「孫子の兵法」以来の戦略を持つ中国だけでなく、アメリカとてそれは同じはずだ。
もちろん、中国の戦争への意志を挫くためのあらゆる施策(外交、経済制裁他)も必要だろう。だがそうした施策はあくまでも、戦争を「回避」するために行われる必要がある。
本書にも、核戦争を最初から望んでいたような人物はいない。しかし結果としてそうなってしまった。ではどの時点の、どの選択が違っていれば核戦争の結末を避けられたのか。事ここに至るずっと前の選択が、こうした結末を招いた可能性はないのか。
「同じ未来をたどらないでくれ」
本書は、今物語の渦中にいる私たちに切実にそう訴えてくるのだ。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。