『CanCam』とロシアの赤い関係?
本書は「ハイブリッド戦」そのものや、その背景にあるロシアの軍事戦略を追いながら、軍事思想、戦争観、さらにはロシアの世界観そのものを描き出してもいる。逆に言えば、世界観がなければ軍事思想も、軍事戦略も、さらにその下位にある戦争の形態もつかむことはできないということだ。
さて、かなり重厚な一冊だが、これだけ硬派で濃密な内容でありながら、突如として、20代女性を主要読者層とするファッション系「赤文字」雑誌『CanCam』の文字が出てきたのには驚かされた。また、政治に忖度したのか北方領土での露軍演習に関する筆者の指摘を「聞かなかったことにする」防衛省職員らとのやり取りには、思わず苦笑いしてしまう。
人呼んで「異能のロシア研究者」、自称「軍事オタク」という筆者のキャラクターが、濃厚なロシア分析の合間にチラリと見える箇所も、どうぞお見逃しなく。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。